生体顕微鏡観察で新しい血小板産生過程を発見医療技術ニュース

京都大学iPS細胞研究所は、骨髄中の巨核球細胞に生体顕微鏡観察を行い、新たな血小板造血の過程を同定し、制御する因子(IL-1α)を明らかにしたと発表した。

» 2015年05月29日 08時00分 公開
[MONOist]

 京都大学iPS細胞研究所は2015年5月12日、骨髄中の巨核球細胞に生体顕微鏡観察を行い、新たな血小板造血の過程を同定し、制御する因子(IL-1α)を明らかにしたと発表した。同研究所の江藤浩之教授、自治医科大学分子病態研究部の西村智教授らの研究グループによるもので、同月11日に「Journal of Cell Biology」オンライン版で公開された。

 同研究グループでは、生きたマウスの体内で骨髄細胞を観察する顕微鏡技術として、高解像度で骨髄を観察する技術を開発。新たに開発されたバイオイメージング技術により、空間解像度300nm、高速(秒30コマ)、マルチカラー(4色)、3次元での観察を可能にした。同手法により、骨髄血管中を流れる血小板と新たに放出された血小板を区別し、巨核球からの造血を単一血小板レベルで捉えることに成功した。

 従来知られている血小板造血のメカニズムは、巨核球が長い足をのばし、その先端から血小板を放出する「血小板前駆細胞(Proplatelet)」という形態をとり、1個1個ちぎれて血小板を産生するというモデルだったが、炎症や感染時の急激な血小板数の増加を説明できていなかった。

 同研究では、Proplateletと呼ばれる造血過程を確認した一方で、Proplateletから放出される血小板数は少ないことも明らかにされた。このことから生体は、血小板造血として、Proplateletと破裂型造血(Rupture)の2つのモードを使い分けており、通常の状態ではProplateletにより血小板を維持していることが分かった。しかし、急激に大量の血小板が必要になるとRuptureが支配的になり、血小板を効率的に作ることが明らかにされた。また、破裂型の血小板造血を誘導する因子として、IL-1αを同定した。

 同成果により、Proplateletとは違う新たな破裂型造血が存在していること、その新過程が炎症時などの急性造血に用いられていること、その制御にはIL-1αが重要であることが明らかにされた。今後、輸血に必要な血小板をiPS細胞から大量に製造する際にも、IL1-αが重要な役割を持つ可能性が考えられるとしている。

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