新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と京都大学は、独自設計の非円形歯車を用いて、変速時における駆動力抜けと変速ショックが全く発生しない変速機を開発したと発表した。非円形歯車の動作の様子も映像で紹介されている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と京都大学は2013年12月16日、変速時における駆動力抜けと、それに伴う変速ショックが全く発生しない変速機を開発したと発表した。具体的には、独自設計の非円形歯車を介した変速によって、減速比の異なる歯車対の切り替えを滑らかに行えるようにした。この技術を適用した2段変速の変速機を電気自動車の実験車両(EVUT:Electric Vehicle with Uninterrupted Transmission)に搭載したところ、走行距離を10%程度伸ばすことができたという。
通常の変速機は、歯車対の切り替えを行う際に、エンジンやモーターなどの動力源と駆動輪の間のトルク伝達を一度切断する必要がある。トルク伝達を切断して歯車対の切り替えが完了するまでの間に、摩擦抵抗などによって駆動輪の回転数が低下してしまう。これが「駆動力抜け」である。駆動力抜けが発生した後の駆動輪の回転数は、動力源から入力される回転数や変速後の歯車対に対応する回転数よりも低いので、歯車対の切り替えが完了してトルク伝達を再開した直後に、駆動輪に急激な回転数の変化が起こる。これが「変速ショック」だ。
今回開発した変速機は、変速時における歯車対の切り替えタイミングで、変速前と変速後の歯車対の中間的な状況を作り出せる非円形歯車を用いた歯車対を使ってトルク伝達を継続する。この非円形歯車は、各変速段に対応する円形歯車の曲率が円周上に反映された形状となっている。
例えば、2段変速の変速機であれば、変速プロセスは以下のようになる。まず、1速の歯車対から、非円形歯車を用いた歯車対への切り替えが行われる。非円形歯車を用いた歯車対の最初のかみ合わせ状態における減速比は1速に対応しているので、この切り替えの際に変速ショックは起こらない。次に、非円形歯車を用いた歯車対が半回転すると、その減速比は2速に対応した状態になる。ここから2速の歯車対に切り替えれば、やはり変速ショックは起こらない。
新開発の変速機と従来の変速機の回転数をテストベンチで比較すると、駆動力抜けと変速ショックが全くないことがはっきりする。動力源(入力軸)の回転数を一定に保ちながら変速を行った場合、新開発の変速機はスムーズに1速から2速への変速が行われている。一方、従来の変速機は、1速から2速への変速開始時にトルク伝達を中断するため、駆動輪(出力軸)の回転数が摩擦抵抗で低下してしまう。そして、2速に切り替わってトルク伝達を再開したと同時に、急激な回転数の増加が発生してしまう。
新開発の変速機は、駆動輪の回転数や回転数の増加速度が一定になるように制御した場合にも急激な回転数の変化は起こらない。つまり、変速の最中であっても、駆動輪の回転数を自由に制御できていることになる。研究チームは「従来の変速機では実現できないことだ」としている。
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