IoTで勝ち残るために選ばないといけない“10のポイント”マイケル・ポーターの「IoT時代の競争戦略」(後編)(4/5 ページ)

» 2015年04月24日 09時00分 公開
[三島一孝MONOist]

7.チャネルの“中抜き”をどうするか

 スマートコネクテッドプロダクトになれば、顧客と直接的につながることができ、直接的な関係性ができるため、流通チャネルの事業パートナーは必要性が小さくなる。さらに、製品の稼働上の問題や故障診断、遠隔修理なども自社で行えるようになる可能性があるため、サービス分野でのパートナーについても依存度が下がると見られている。これらの事業者への支出を抑えることで収益率を引き上げられる点が、スマートコネクテッドプロダクトの1つの利点だと考えられている。

photo テスラモーターズの「モデルS」

 例えば、米国の電気自動車ベンチャーであるテスラモーターズは、従来の自動車メーカーのように代理店網を通すことなく、直接消費者に製品を販売している。これによりシンプルな価格設定が必要になっただけでなく、修理代金なども自社に支払われるなど、さまざまな利点を享受しているといえる。車載ソフトウェアは通信網経由でアップグレードする他、修理の必要性を検知した場合は、遠隔修理要請などを簡単に行える。

 しかし、一方でこれらの事業者の“中抜き”についてリスクがあることも事実だ。販売やサービスを担う事業パートナーを“中抜き”すべきかどうかについては、どういうパートナーと付き合っているかということが重要だ。「製品を右から左へ流しているだけなのか」「現場の研修などに欠かせない存在なのか」など、パートナーの業務の内、スマートコネクテッドプロダクトにより代行が可能なのかどうかを精査しなければならない。

8.ビジネスモデルを変更すべきか

 メーカーは従来、モノを生産し販売して所有権を買い手に移転し、対価として利益を得るというビジネスモデルだった。これは同時に買い手側に、製品の所有に伴うサービスコストや使用コストの負担責任が生まれ、保証対象外の不稼働時間や故障、欠陥のリスクなども追わせることになっていた。

 このビジネスモデルを大きく変化させるのがスマートコネクテッドプロダクトだ。メーカー側は製品データの活用や故障の予測、減少、修復する能力、製品を最適に制御するサービスなどを組み合わせれば、多様なビジネスモデルを創出可能となる。例えば、「製品のサービス化(サービタイゼーション)」によりメーカーが製品の所有権を保持しながら顧客から定期的に料金を徴収し、運用とサービスのコストを引き受けるというような形態が可能になる。

 ただ、スマートコネクテッドプロダクトはメーカーにジレンマももたらすことになる。特に寿命が長く複雑な製品を提供しており、そこから大きな売り上げと利益を上げているような企業にとっては、難しい判断を迫られる。製品のサービス化を求める動きが外部からあったとしても、その企業にとっては利益を得ることが難しいからだ。

 製品のサービス化の収益性は価格設定と契約条件によって決まり、それは売り手と買い手の交渉力による。メーカーが製品のサービス化を推進すれば、顧客は製品を所有する場合と異なり、契約期間が終了すればすぐに他社に乗り換える可能性もあり、買い手の交渉力が高まる可能性もある。

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