デジタルツインを実現するCAEの真価

あなたが信じるのは解析? 実験? それとも自分の勘?CAEイベントリポート(2/2 ページ)

» 2015年04月22日 09時00分 公開
[加藤まどみMONOist]
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センスは天性ではない

 自身の経験から若手へのアドバイスも語った。西脇氏は「センスは磨けると思っている」という。それには「異分野を学ぶこと」と、「自分に対して否定的な意見も素直に聞ける」という2つの条件があればいいという。また例えばテキストの例題を全て自分の持っているソフトウェアで解くのもよい勉強になるそうだ。数を重ねれば、プロダクトを見るとどこが危なそうかが見えてくる。「多分、無意識のうちに自分の頭の中でメッシュを切っているのだろう。こういったことでもセンスは養える。あまりセンスは天性だとは思っていない」(西脇氏)。

 岡田氏は、ものを作る大前提として商品に対して機能や作り方などに興味を持つことが必要だという。興味がなければいくら座学を行っても身に付かないからだ。

 また岡田氏は現場密着の大切さも語った。実はオムロンでは、IT部門としてのCAEの推進を1年間完全に停止した時期があるという。IT視点での推進をしていると、解析者が設計現場に行かず請負仕事だけをして、実験結果に解析結果を合わせるような状態になってしまっていたからだという。そこで業を煮やした当時の取締役が「一度つぶそう。困るという声が出れば再構築すればいい」と言い停止となった。現在のCAE部門はCAE専任者を育てるのではなく、CAEができることと限界を理解した上で、「手段としてCAEを使う」という状態になっているということだ。

教育は徒弟制度で現場重視

 2人とも同意見だったのが、教育は徒弟制度で、実験重視ということだ。アシックスにはCAEの独立チームはなく、学生時にシミュレーションのみやってきた人は、まず1年くらい実験に携わるという。「コンピュータ、シミュレーション好きが、バットを握るという境界条件をどう設定しようか悩むところに、成長のトリガーがあると思う」(西脇氏)。面白い解析方法などを考えるのも大抵実験屋さんだそうで、ずっと実験をやった上でどうしても見えないメカニズムを見たいから有限要素法に取り組んだようなタイプが、割と伸びるとのことだ。また師匠役が必要で、自分で考えたメッシュや解析手法のどこが悪いかを直してもらわないと、なかなかスキルは上がらないという。

 一方オムロンではCAEが1つの部隊としてあるが、やはり現場を知ることを前提に、ベテランと若手を組ませたOJTと、人材ローテーションの2つの方法で教育を行うという。OJTは実際の1つのテーマに取り組む現場密着方式で、CAEだけでなく機械設計のノウハウなども総合的に教育するという。人材ローテーションでは設計現場に出向して3年で戻るといったことを行う。その際は相手の部署に取られないように注意とのことだ。会場からの「解析の師匠がいない」という声には、岡田氏が幹事をしているCAE懇話会に入ってもらえれば、現場に近いところで活躍している人が多く参考になるとのことだ。

 他にも「CAEを社内で定着させるには」という会場からの質問には、「小さく効果の見えやすいトラブルシューティングを積み重ねていくこと」「解析結果を見せるのではなく、まずアイデアを提案し、深く聞かれたときにCAEにからめて説明をする方がうまくいく」といったアドバイスも出た。

会場ではアンケートに加えて参加者からの質問タイムも設けられた。
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