スポーツ用品メーカーのアシックスと制御機器やヘルスケア製品を提供するオムロンという異業種のCAE推進担当者が、CAE導入の現場を語った。両社で一致したのは、「実験の大切さ」「教育は徒弟制度で」ということだという。
ソリッドワークス・ジャパンは2015年4月7日、「SOLIDWORKS CAEセミナー〜創造をカタチに変える原動力 アシックス流vsオムロン流CAE座談会〜」を開催した。この座談会には、アシックス 執行役員でスポーツ工学研究所 所長・フェローの西脇剛史氏と、オムロン グローバルものづくり革新本部 生産プロセス革新センタ 生産技術部の岡田浩氏が登壇した。ソリッドワークス・ジャパンの大澤美保氏の司会により、両社の異なる点や共通点などを交えながら、CAEの活用や教育などについて語られた。
またWeb上のリアルタイムアンケートシステムを使い、会場の参加者への質問を挟みながら進行するとともに、登壇者への質問タイムも設けられた。なおはじめのアンケートによると、CAEを使っている参加者は7割程度だった。
「解析結果と実験結果、どちらを信じるか」というアンケートでは、会場の参加者は解析結果が3、実験結果が25、自分自身の勘という回答が13となり、CAE使用者が多いにもかかわらず、圧倒的に実験結果を信じるという参加者が多かった。
西脇氏は「妥当な結果だと思う」とした上で、「完璧な条件を全てそろえることは実際は難しい。解析結果をそのまま信じて物を作るという使い方ではなく、いかにたくさんの解析を回して、要所での判断に使うかがポイントだ」とした。なお(動解析の)減衰に限っては「実験が全く当てにならないため、CAEを信じるとのことで、ケースバーケース」だという。
一方岡田氏は、CAE推進の立場だが「自分自身の勘」との答えだった。これは、実験とCAEの結果が合わなかった時の“分析に”勘を働かせるという意味だそうだ。結果が合わなかった時にまず手を付けるのは実験現場の確認だという。小さな部品に熱電対をたくさん付けたりと実験条件に問題があることもあるからだ。
一方CAE側の問題を考える時に気を付けておかないといけないのは、CAEの誤差には計算力学的なものと、機械工学の限界によるものの2つがあるということだ。“あり得ない値”が出た時は、大抵メッシュの切り方や拘束条件が間違っている。それらをつぶしたうえで合わなければ「論理計算式と実態が違う挙動を示しているからだろう」(岡田氏)という。それが何かを突き詰めるため、フィッシュボーン図(特性要因図)を徹底的に書く。そこからシミュレーションで追えるパラメータと実験でしか追えない箇所を整理した上で、現場と相談しながら課題解決を進めていくそうだ。
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