解析速度従来比約10倍の新たなヒトゲノム解析用スーパーコンピュータ医療機器ニュース

東京大学医科学研究所は、新たなヒトゲノム解析用スーパーコンピュータシステム「Shirokane3」の本格稼働を4月1日から開始する。従来システム比約10倍の速度でヒトゲノム情報の解析が可能で、約100万人分のデータを保存できる。

» 2015年04月16日 08時00分 公開
[MONOist]

 東京大学医科学研究所は2015年3月26日、同研究所ヒトゲノム解析センターがヒトゲノム解析用スーパーコンピュータシステムを刷新し、「Shirokane3」として同年4月1日から本格稼働を開始すると発表した。

 Shirokane3は、従来システムの約10倍となる速度でヒトゲノム情報を解析できるシステムとなる。合計1万1160CPUコアを持つ「分散メモリ型サーバ」と、1ノード当たり2TBのメモリ容量を持つ「大規模メモリサーバ」により、422 TFLOPSの総合理論演算性能を可能にした。ストレージの記憶容量は、本格稼働の開始時点で合計34.2PBで、必要に応じて容易に増量できる構成となっている。これら大容量のストレージ装置により、従来システム比約33倍の約100万人分のデータが保存できるという。

 また、間接蒸発式冷却装置を導入した超低電力冷却システムなどを採用し、電力消費の効率化も図った。セキュリティ面では、ヒトゲノム所有者の個人情報を厳重に管理するため、匿名化の手続きに加え、ヒトゲノム情報を扱うシステム領域を外部のインターネットと完全に隔離。さらに、ログイン認証に生体認証を採用し、高セキュリティ領域を確保している。

 今回の新システム稼働により、膨大なデータからヒトゲノムが変異した箇所を高速に検索・特定し、ヒトゲノム変異と疾患要因の因果関係分析や治療効果の高い医薬品の予測など、最適な治療法研究の効率化が可能になるという。これにより同センターでは、個人のヒトゲノムの特徴に応じたがんや感染症などの予防・診断・治療法の研究を加速させ、個人の特性に応じた個別化医療の実現を目指すとしている。

 なお、新システムは、同研究所に所属する研究者の他、国内他機関の研究者や医療関係者の利用も可能。システムを構築した日立製作所では、システムの稼働状況を監視する機能も開発している。同機能により、システムにかかる負荷をリアルタイムで監視し、効率的な分散処理を行うことでシステム障害の発生を防止するという。

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