山根氏は日本における研磨作業の現状について、「研磨にオートメーション技術を利用する場合もあるが、日本ではその多くが手作業で行われている」と説明する。このように属人的な工程である研磨作業だが、こうした作業を担う中小製造業などは人手不足など、さまざまな経営課題を抱えている場合も多い。そこで3Mは「研磨作業の効率化」という視点から、製造現場における労働生産性の向上を通して経営改善に貢献しようというユニークな取り組みを行っている。その中核を担うのが、2012年5月に結成された研磨アドバイザー集団「3M 研援隊(以下、研援隊)」だ。
研援隊は日本全国の製造現場を訪問し、研磨作業に関するヒアリングや、キュービトロンII シリーズのデモンストレーションを行う“研磨のスペシャリスト集団”。3Mの製品を実際に使ってもらうことで、数字だけでは伝わりにくい製品性能を体感してもらうおうという狙いもある。研援隊は現在9人のメンバーで構成されており、今回発表を行った九州地区では2人のメンバーが活動を行う。
会見と併せて行われた現場見学会では、車両の板金や塗装、追加架装を手掛ける九州ふそうビプロスの作業現場で、同社の作業員や研援隊のメンバーが実際にキュービトロンII シリーズで研磨を行う様子を見みることができた。九州ふそうビプロスは、2014年7月からキュービトロンII シリーズを使用しているという。
九州ふそうビプロスでは、キュービトロンII シリーズを採用したことで、研磨そのもののスピードが向上しただけなく、これまで何度か研磨材を交換する必要があった研磨作業が、1枚の研磨材ディスクのみで行えるようになったという。また、研磨を行っても焼け跡が付きにくいため、そのまま塗装工程に移れるようになったなど、複数のメリットが挙げられた。
こうした研磨作業の効率化は、中小製造業の経営にどういった効果をもたらすのか。九州ふそうビプロス 架装部 主任 満潮和久氏は「研磨工程全体の作業効率が上昇したことにより、請け負いきれずに外注していた研磨作業を内製化できるようになった。それまではトラック15台分を外注していたが、キュービトロンII シリーズを導入して以降、これを10台に減らすことができた。5台分を内製化できるようになったというのはとても大きい。さらに作業効率が上がれば、従業員の残業時間を削減できるといったメリットもある」と語る。
3Mは2015年3月から九州における研援隊の活動を強化する方針だ。自動車や造船関連の企業などが集積しており、製造業が盛んな九州地区の製造現場への訪問をさらに拡大させていくという。
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