実際に現場へと足を運び、研磨作業の効率化から中小製造業の経営をサポートする研援隊。3Mがこうした活動を行う背景について山根氏は「以前から続けてきた電子部品や自動車部品関連の産業に加え、今後は老朽化したインフラのメンテナンスなどの分野も重要になってくる。その際必要になる金属加工やメンテナンス・補修といった作業の背景には、中小製造業が連なる1つの大きな産業があると考えている。そこで3Mとしては、中小製造業への提案活動の促進と、企業競争力の向上に向けた提案を強化していきたい」と語る。
研援隊の活動の特徴の1つとして、研磨材製品などを販売する各地域の販売店とのネットワークの構築に注力しているという点がある。現場を訪問する際には、研援隊とともにこうした販売店が同行する場合もあるという。これについて山根氏は「われわれの顧客には中小製造業の方が多く、研磨材製品などの商品の流通経路が多岐にわたっている。昨今はeコマースなどもあるが、3Mとしては地域のネットワークに根ざしている流通販売店網と連携して中小製造業との接点を持つことを重要視している」と説明する。
さらに同氏は「しかし、製品の販売方法を流通網だけに依存してしまえば、実際にモノを作っている現場との距離が遠くなってしまうのでないかという危惧もある。3Mの最初のイノベーション製品である耐水研磨材のウェットオアドライは、現場のアイデアから生まれた製品。やはり今後もこうした現場のアイデアを重視していきたい。そこで、全国各地の製造現場に対して、実際に研援隊が現場を訪問を行うことで、直接の支援を強化していきたいと考えている」と語った。
2012年からスタートした研援隊の取り組みなどもあり、キュービトロンII シリーズの売り上げは2013年度から2014年度にかけて約2倍に成長したという。3Mは2015年度にはこの数字をさらに倍にすることを目指すとしている。
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