桜の花の落ちるスピード「秒速5センチメートル」は正しいのか?流体力学で検証(3/3 ページ)

» 2015年04月01日 10時00分 公開
[小林由美MONOist]
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結論

 「手計算で桜の花びらが楕円板と仮定して計算してみると、落下速度は秒速1.4メートルとなります。これは楕円板が水平に保たれたまま落下した場合の値で、実際には回転したり、傾いたりしながら落下するので、これよりも落下速度は大きくなります」(伊藤さん)。

 結論としては、「桜の花びらが落ちる速度が秒速5センチメートルになることはないだろう。ただし秒速1.75メートルの上昇気流が起これば、秒速5センチメートルになるかも」ということでした。また実際は「秒速2メートル」くらいではないかということでした。単位はセンチメートルではなく、メートルです。

 作中には「(降ってくる桜の花びらが)まるで雪みたいじゃない?」という明里のせりふもありましたが、牡丹雪の落下速度が秒速0.3〜0.8メートルだそうです(関連リンク:宮澤清治の防災歳時記)。こちらも単位がメートルです。そのことからも、通常は秒速数センチメートルの範囲にはとどまらないことが分かります。なお「秒速5センチメートル」の根拠になったであろう情報は、伊藤さんがざっと探してみた限りでは見当たらなかったそうです。

 「桜の花びらの落下速度と同じくらいの横風が吹くため、木の根元の周り1〜2mくらいに桜の花びらが散らばります。よほどの無風状態でもない限り、お花見の景色からしてもそんなものかなと思います」(伊藤さん)。

 「秒速5センチメートル」は小学生の女の子が言ったせりふです。そもそも数字自体に根拠などなく、誰かに聞きかじったことを適当に言っていただけという設定なのかもしれません(ウィキペディアには新海監督自身が「ネット上で交流していた人物に聞いた」という記述がありましたが、出典が不明でした)。

 1つ言えることは、秒速5センチメートルという速度が「結構遅い」ということです。まるで、いつまでたっても幼き日の恋と決別できない貴樹の時間の流れを象徴しているかのようです。一方、明里は貴樹に恋をしたことは思い出になり、新しい出会いもあります。貴樹と明里の時間の流速は、単位が変わるほどの差があったということなのかもしれません。

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