MONOist 産業の変化についてどのように感じていますか。
沈氏 電子機器などテクノロジー産業は今大きな変化の時期を迎えている。PCやテレビ、スマートフォンなどの技術はもう成熟しており、いわゆる“古い”技術となってしまった。今求められている技術は、3DプリンタやIoT(モノのインターネット)、ロボット、環境対応自動車などにしても、材料やソフトウェア、メカなどさまざまな技術を組み合わせた複合体として成立している。
そのためこれらの要素を1つの企業内で完結するのが非常に難しく、うまく協業していくことが重要になっているといえるだろう。
MONOist グローバルで生産拠点を保有する強みを実際にどう生かしていますか。
沈氏 少し前のEMSのビジネスモデルは非常にシンプルだった。メーカーから生産を請け負うと、人件費の安い地域で生産をし、それをメーカーに納品するという形だ。「とにかく人件費が安いところで生産する」ということに集中していればよかった。
しかし、現在はそういう状況ではなくなっている。中国をはじめとして生産集積地は人件費が高騰する他、政治的リスクも大きい。また、最終消費者のニーズの多様化が進んでいる。そのため、リードタイムを短くし、生産量に柔軟性を持たせることが最も重要になっている。
その意味で主要な消費地に近い生産拠点を持ち、安定した開発力や生産能力を提供できるわれわれは、グローバル展開を強化したい製造業にとって有力なパートナーになれると考えている。既に主要地域に生産拠点を保有している大手製造業は問題ないが、何もないところからグローバル生産体制を築くのは難しいことも多い。これらの点において課題を抱えている企業をわれわれは支援する。
MONOist 実際に数多くの拠点を安定的に運営し、リードタイム短縮に貢献するため、マネジメント面でどういう工夫を行っていますか。
沈氏 先ほども説明したが、われわれは基本的に全ての工場で同じオペレーションで生産を行えるような体制を築いている。全てを標準化しておくことで、需要の変動や仕向け地の変動が起きた時に、実際に生産を行う生産拠点を変更したり、ラインを変更したりすることができるようになる。
そのバックボーンで重要となるのが、ITシステムだ。あらゆる生産データと連携させ、全ての工場の生産情報を本社で把握できるような仕組みとなっている。この優れたITシステムをベースにさまざまな判断を行うことで、柔軟な生産を行えるようになっている。
生産性の面でも、自社内に抱えた自動化部門により、省人化や省力化を進めており、そのノウハウを全世界の工場に水平展開している。またグループ内の垂直統合なども強化しており、グループ内のプラスチック成形企業や板金加工メーカーなどと協力して、一貫生産が行えるような体制なども築いている。
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