最近SUVの販売を伸ばしているPorshe(ポルシェ)ブランドだが、ジュネーブサロンでは、サーキット走行を念頭において開発された「911 GT3」の進化版である「GT3 RS」と、その妹分である「ケイマン」の頂点となる新グレード「ケイマン GT4」を発表し、スポーツカーメーカーの威厳を見せた。
911 GT3 RSは、ドイツの北にある名門サーキット場「ニュルブルクリンク」で、約22kmもの全長を誇る北コースを、「911シリーズ」の中でも最速となる7分20秒で周回できるスポーティな性能がセリングポイントだ。排気量4lの水平対向6気筒ユニットを搭載し、専用開発のPDK(ポルシェブランドのデュアルクラッチトランスミッションの名称)と組み合わせることにより、最高出力500ps/最大トルク460Nmを発揮する。
もう一方のケイマン GT4は、ベース車より30mmも全高が低いシャシーを採用。911 GT3から足周りの部品を流用し、ブレーキを強化したシリーズ最強モデルになる。フロントに大きく空いたエアインテークの開口部と、大型のリヤウイングによって、空力性能を向上させている。見た目にもかなりレーシーな雰囲気だ。搭載されるパワートレインは、最高出力385psを発揮する排気量3.8lの水平対向6気筒エンジンと6速マニュアルトランスミッションの組み合わせ。時速0〜100kmの加速を4.4秒でこなし、最高時速は295km達する。
ポルシェブランドを率いるマティアス・ミュラー氏が、フォルクスワーゲングループの取締役に就任したことこともあり、プロダクトと経営の両面で、今後の展開から目が離せない。
2014年、ウォルフガング・デュルハイマー氏がCEOに復帰して、積極的な事業展開をもくろむBentley(ベントレー)ブランドでは、マクラーレン、Aston Martin(アストンマーチン)、フェラーリなどのスーパースポーツカーに対抗する2人乗りスポーツクーペの開発が示唆されていた。それがようやくジュネーブでベールを脱いで、コンセプトカーの「EXP 10 スピード 6」として披露された。
ブリティッシュグリーンのメタリックに塗装されたボディは、高性能スポーツカーらしいフォルムだ。低くワイドなフロントグリル、短いフロントのオーバーハング、ロングノーズといったディティールは、空力を重視したと同時に、ベントレーのヒストリック・モデルからの引用でもある。
内装は、桜の木を使って木目を際立たせたウッドパネルとエンボス加工が施された革シートなどクラシックなディティールにこだわる一方で、12インチのタッチパネル式ディスプレイを備えるなどの現代的な装備も忘れていない。ベントレーは今後、SUVを投入する予定も控えており、販売台数を倍増させる方針だ。
最後に、新型パサートが「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したことが発表された。8代目を数える、フォルクスワーゲンブランドの中で最も売れるクルマの1つであり、技術も満載されている。
グループ全体を率いる会長のマルティン・ヴィンターコルン氏は、「フォルクスワーゲンは、イノベーションのシンクタンクであり、技術開発を通じて未来を切り開いていく」と宣言し、115億ユーロ(約1兆5000億円)の投資を行ったことを明らかにした。
川端由美(かわばた ゆみ)
自動車ジャーナリスト/環境ジャーナリスト。大学院で工学を修めた後、エンジニアとして就職。その後、自動車雑誌の編集部員を経て、現在はフリーランスの自動車ジャーナリストに。自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性、ジャーナリストとしてハイブリッドな目線を生かしたリポートを展開。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の他、国土交通省の独立行政法人評価委員会委員や環境省の有識者委員も務める。
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