アップルの「CarPlay」が初披露された「ジュネーブモーターショー2014」は、自動車業界のみならず、世界中のIT関係者の注目をも集めるイベントとなった。本記事では、同ショーで、メルセデス・ベンツ、フェラーリ、ボルボが展示したCarPlay対応車載器を紹介するとともに、CarPlayが今後の自動車業界に何をもたらすのか考えてみたい。
よもや、「ジュネーブモーターショー」で、Apple(アップル)が「CarPlay」の発表をするとは予想していなかった。世界5大モーターショーに数えられるジュネーブモーターショーは、自動車業界に身を置く者にとって注目に値するイベントである。しかし、2014年の同ショーの幕開けを控えた2014年3月2日、アップルが出したCarPlayのプレスリリースでジュネーブモーターショーが初披露の場になることが判明したため、世界中のIT関係者の視線も注がれることになった。ショー開幕直前の発表だったこと、アップルからのリリースがあまりにもあっさりしていたこともあって、CarPlayについてはさまざまな臆測が飛び交った。
端的に言えば、CarPlayとは、アップルが2013年6月に「iOS in the Car」として発表したコンセプトの市販バージョンである。「iPhone」と、車両に搭載したインダッシュタイプのディスプレイモジュールをケーブルでつないで通信し、iPhoneの機能をディスプレイモジュールの画面に表示する。操作は、音声エージェント「Siri」による音声操作、タッチパネル、車載情報機器向けの専用コントローラなどで行う。CarPlayで利用可能な機能は、「マップ」アプリを使ったカーナビゲーション、ハンズフリー通話、音楽再生やメールの送受信などとなっている。
アップルのプレスリリースでは、ジュネーブモーターショーの会場で、Daimler(ダイムラー)の「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」ブランド、Ferrari(フェラーリ)、Volvo Cars(ボルボ)がCarPlayに関する展示を行うとしていた。
面白いことに、対応は三者三様だった。
メルセデス・ベンツは、ショー前日の2014年3月3日に開催した恒例の前夜祭で、インターネットを活用した包括的な新サービス「Mercedes Me(メルセデス・ミー)」を発表している。その詳細は個別の記事に譲るが、これと同時にアップルと共同で開発したCarPlay対応車載機のデモンストレーションを行ったのだ。
iPhoneと車載機をケーブルでつなぐと、CarPlayで利用可能な標準アプリのアイコンがディスプレイに表示される。このアイコンは、iPhoneで使っているものと同じものだ。アプリの選択や操作は、メルセデス・ベンツの車載情報機器を操作するのに用いる「コマンドコントローラー」で行う。メルセデス・ベンツは、CarPlayで利用できる独自のアプリも開発しており、他の標準アプリのアイコンと一緒に並べられていた。このアプリは、Siriを使ったボイスコントロールにも対応している。
メルセデス・ベンツのCarPlay対応車載機で、マップアプリを使ったカーナビゲーションを行う場合、車載機側のGPSによって得た位置情報や車速パルスもiPhoneに読み込んで利用するので、iPhone単体でマップアプリを使うよりも精度が高い。マップアプリ内での自車位置の特定に役立てるため、一般的なカーナビゲーションシステムと同様に、車載機のディスプレイ上での拡大・縮小や、車両が通れないような狭い道の削除といった対応も可能だ。このCarPlay対応車載機は、2014年中に「Cクラス」から採用がスタートする。
「メルセデス・ミーは、モビリティ、コネクティビティ、サービス、ファイナンス、インスピレーションといった5つの柱から成る総合的なサービスであり、車両の内と外をシームレスにつなぐものです。一方、CarPlayは、顧客に提供するオプション製品という位置付けです。われわれは、アップルとの共同開発によるCarPlayだけでなく、Google(グーグル)とAndroid端末に対応する製品の開発を進めています。アジア市場を中心に高いシェアを持つAndroidスマートフォンのユーザーに不便を掛けるわけにはいきません。これらのiOSやAndroidといったプラットフォームを通して、スマートフォン向けの便利なサービスを車両内でも積極的に利用していく方針です」(メルセデス・ベンツ北米R&D コネクテッド・インフォテインメント&コンシュマーエレクトロニクス シニア・エンジニアリング・ディレクター Kal Mos氏)
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