ボルボは、ステーションワゴンのスタイリングを持つ「コンセプト・エステート」に搭載した車載機にCarPlayを組み込んでデモンストレーションを披露していた。メルセデス・ベンツやフェラーリと比べると、CarPlayが車載機の機能の1つという印象が強いデザインになっている。
例えば、メルセデス・ベンツとフェラーリは、CarPlayの画面からiPhoneアプリのアイコン風にデザインされたブランドロゴを選択すると、CarPlayとは異なる独自機能の画面に表示が切り替わる。しかしボルボの車載機のディスプレイは、タブレット端末のように縦長で大型サイズであることもあってか、車載機の各種機能と並列する形でCarPlayの画面も同時に表示される。
タッチパネルでの操作が前提になっているが、タッチパネルを長押しするか、ステアリングホイールの後ろにあるボタンを押せば、Siriによる操作も行える。
「人間工学的な使いやすさを重視し、CarPlayの画面と空調制御のインタフェースを1つのディスプレイの中で同時に表示することにしました」(ボルボ・カーズ インタラクション・デザイン・マネージャー Mikael Gordh氏)
ジュネーブモーターショー2014でCarPlayの展示を行ったのは上記の3社だけだったが、2014年中には、これら3社に加えて、ホンダ、Hyundai Motor(現代自動車)も対応車両を市場投入する方針だという。
さらに、BMWグループ、General Motors(GM)の「Chevrolet(シボレー)」ブランドと「Opel(オペル)」ブランド、フォード、Jaguar Land Rover(ジャガーランドローバー)、Kia Motors(起亜自動車)、三菱自動車、日産自動車、PSAグループ、富士重工業、スズキ、トヨタ自動車も、アップルとCarPlayのパートナーシップを結んでおり、将来的に対応車両を投入することになりそうだ。
国内自動車メーカーでは、唯一、マツダが参加表明をしていない。新型「アクセラ」に、Harman(ハーマン)製の車載情報機器「Mazda Connenct(マツダコネクト)」を新たに採用。2014年1月開催の「2014 International CES」では、米国のOpenCarと連携してマツダコネクト向けアプリの開発を促すアプリケーションプラットフォームの活用を発表したばかり。ヘッドアップディスプレイや車載ディスプレイの視認性の高さも含めて、マツダコネクトは注目されているだけに、アップルが提案するCarPlayを検討していないはずはない。
2018年までに世界一の自動車メーカーを目指すVolkswagen(フォルクスワーゲン)グループも、CarPlayとパートナーシップを結んでいない。同ブランドの技術担当役員であるDr.Heinz-Jakob Neusser氏にスマートフォンとの連携について尋ねてみたところ、「フォルクスワーゲンとしては、顧客がコネクティビティを活用することで、最も高い利便性が得られることを重要視しています。現段階では、グーグルと共同でスマートフォンとの連携機能を開発中です。これは世界全体の市場動向を見た上での判断であり、世の中にあるオープンソースの利便性の高いものは使っていこうという姿勢です」という回答だった。
CarPlayに対する明確な言及はなかったものの、アップルとの提携を否定しているわけでもない。実際に、2013年4月開催の「上海モーターショー2013」で発表された「iBeetle」は、当時としては先進的にiPhoneと車両を連携させられるコンセプトカーだった。iPhoneのアプリを車載機のインタフェースを介して利用できたり、iPhoneの楽曲データやインターネットラジオアプリを車載機のオーディオ機能で再生したり、メールの送受信やSNSとの連携が可能だったりという機能は、CarPlayとほぼ同じだ。今回の発表にフォルクスワーゲンの社名はないが、アップルとのパートナーシップが背後に見え隠れする。
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