巨人アップルにかみついた――。米国アップルに対し、そのサプライヤーだった島野製作所が、独禁法違反と特許侵害で訴訟を提起したことが注目を集めている。係争のポイントとなった特許は何だったのか。知財の専門家である筆者が「特許関連情報」と「公開情報」を中心に訴訟の争点を解説する。
知的財産(知財)を通じて、業界動向を読み解く連載「知財コンサルタントが教える業界事情」ですが、今回は米アップル(Apple)とそのサプライヤーだった島野製作所との間で繰り広げられる特許訴訟を取り上げます。実は知財に関連する訴訟の場合、公開情報を調べるだけでも、かなり詳細に争点を把握することが可能です。今回は「この特許訴訟で争点となったのはどういうポイントなのか」また公開情報だけでどのように調査すればよいのかということを解説したいと思います。
アップルのサプライヤーだった島野製作所は、2014年9月12日にアップルを東京地裁に提訴したことを発表しました(ニュースリリース PDF)。アップルは毎年、部品納入を行うサプライヤーのリストを公開しており、取引の透明性をアピールしています。2014年段階のサプライヤーリストには既に島野製作所は記載されていません(Apple Inc.が公開している「Supplier List 2014」と企業名 PDF)。
まず、「島野製作所とアップルとの間に、何が起こったのか」を確認してみましょう。既に独占禁止法についての裁判が始まっていますが、まずは2014年9月12日に島野製作所から公開された情報を基に提訴した内容を振り返ります。提起された訴訟は以下の2つです。
これらに対して島野製作所が請求しているのは、独占禁止法違反については「リベート支払いなどに関する損害賠償」、特許権侵害については「一部のアップル製品についての販売差し止めおよび損害賠償請求」となっています。
島野製作所をアップルのサプライヤーとして9年間継続して部品を供給してきましたが「その取引の中で看過できない行為があったため「訴訟を提起し、今後の裁判を通じてアップルに対し、当該行為の責任を追及する」(同社)としています。
日本の裁判所の管轄権は「民事訴訟法」で規定されています。
日本の裁判所の管轄権(民事訴訟法3条の2以下)には、以下の規定があります。
※)「不法行為に関する訴え」には、特許権侵害に基づく損害賠償請求および差し止め請求も含まれると解される。また「不法行為があった地」については加害行為地と結果発生地の双方を含むと解される。
ここでポイントとなるのが「不法行為地管轄」です。「不法行為に関する訴え」には、特許権侵害に基づく損害賠償請求および差し止め請求も含まれると解されます。また「不法行為があった地」については加害行為地と結果発生地の双方を含むと解されます※)。
※)弁護士・弁理士・米国ニューヨーク州弁護士 山内貴博 「日本における特許侵害訴訟について」(2014年10月30日:講演資料)
これらの法的規定による管轄範囲を考慮した結果、島野製作所は、独占禁止法等の違反についてはアップル本社(海外)を、特許侵害については、アップル本社およびApple Japan合同会社(日本法人)の双方を、東京地裁に提起したと推察されます。
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