アベノミクス第3の矢を実現する10のイノベーション【前編】:安倍政権の命運を左右する?(6/6 ページ)
人手不足や輸入品のシェアが拡大するなど、さまざまな課題を抱える日本の農林水産業。こうした課題の解決に取り組むのが「次世代農林水産業創造技術」プログラムだ。農産物の生産や品質管理にITを活用する、いわゆるスマートアグリに関する技術研究開発や、新たな養殖技術の開発などに取り組む。2014年度の予算配分は36億2000万円である。
「次世代農林水産業創造技術」プログラムのPDを務める西尾健氏(左)と同プログラムの概要(右)(クリックで拡大)出典:内閣府
同プログラムのPDを務める法政大学 生命科学部教授の西尾健氏は「これまで新たな農業技術の開発は進みにくい面があった。このプログラムでスマート化を進めることで、農業を“知識産業”に変えていきたい。ITや自動化技術を活用して高収量、高品質を実現する次世代の農業を作っていきたい」と説明する。
また、農業の手法に関する研究開発だけでなく、ゲノム編集技術などを活用して、より生産性や品質の高い農作物などの開発も進めていくという。「桃栗3年、柿8年という言葉があるが、これを1年に短縮することを目標としている。また、マグロに関しては養殖しやすい“おとなしいマグロ”の開発も行っていく」(西尾氏)。
「次世代農林水産業創造技術」プログラムで取り組む研究内容(クリックで拡大)出典:内閣府
こうした研究テーマに加え、木材を切り出す際に発生する残材を活用した、付加価値の高い工業製品の開発や、藻類を活用してドコサヘキサエン酸(DHA)などの有用成分を生成する「水産版植物工場」の構築など、新たなビジネスモデルの実現にも取り組むとしている。
後日掲載する後編では、残りの5プログラム「革新的燃焼技術」「革新的構造材料」「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」「レジリエントな防災・減災機能の強化」「革新的設計生産技術」について紹介する。
⇒後編記事はこちら
- 自動運転技術開発担当PDの渡邉氏が意気込み、「国がやるR&Dの新しい形見せる」
自動運転技術の開発に日本政府も本腰を入れ始めた。政府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)における2014年度の10の対象課題に、自動走行(自動運転)システムが入ったのである。プログラムディレクター(PD)に就任したITS Japan会長の渡邉浩之氏は、「国が関わるR&D(研究開発)の新しい形を見せたい」と意気込む。
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IoT市場拡大の基礎となっているさまざまなセンサー技術の進歩や、それに伴って登場したウェアラブル端末などが新たな市場を切り開きつつある。こうした新しい技術やデバイスは、日本の防衛装備にも活用されており、防衛省の平成27年度概算要求にも反映されている。クラウドを活用する次世代戦闘機を筆頭に、ドローン、陸上無人機、パワードスーツなどの導入/開発を計画しているのだ。
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