「製造現場において損益の“見える化”を実現する価値」について紹介する本連載。前回は組み立て加工業の事例を紹介しましたが、2回目となる今回はプロセス産業の事例を紹介します。
損益を加えたサプライチェーンマネジメントの事例を通じ、「なぜ現場で損益を把握していなければならないのか」「その効果にはどのようなことがあるか」という点について、業種に応じて解説する本連載。前回の「数量での需給調整に四苦八苦! それでももうからない組み立て系製造業の課題」では、組み立て系製造業の抱える問題について紹介しましたが、今回はプロセス系製造業の課題を事例を通じて紹介します。
素材化学メーカーB社のある事業では、事業部が主導するSCMプロジェクトが立ち上がりました。目的は、SCM・事業管理間の連動性と製造・販売の連動性を高めることです。
日本の大手化学メーカーの多くは組み立て産業に比べて、かなり早い段階から、事業部を中心とし、SAPなどを主としたERPの導入を進めてきました。このERPシステムを利用した標準原価に基づく損益管理が早くから定着してきたといえます。
しかしながら、その管理対象は主に金額であり、期中においては「過去は実績」「将来は予算ベース」のままです。言い換えると、損益計画における将来部分の見込みは「数量を中心とした裏付けそのものが弱い」といえます(図1の状態)。
この主な原因としては以下の2点が挙げられます。
これらを解決するために、組織・業務的に、需給調整計画業務と事業管理業務を1つにして、事業管理と需給調整のそれぞれの意思決定タイミングや人を一致させることを目指しました。これによって、経営層と現場層の連動性を高め、需給調整計画と事業計画との乖離を防ぎ、需給調整計画の見直しが発生しづらい状態を作り上げます(図2の状態)。
数量の確かな裏付けで損益計画を立てるためには、まず数量計画そのものが信頼に足るものでなければなりません。しかし、主に以下の2点が原因で、数量計画そのものの裏付けが曖昧なものになっていました(図1の状態)。
これらに対して、「販売計画→在庫計画→生産・調達計画」という一連のバリューチェーンの連動性を強めることによって、数量計画自体の裏付けを明確にするとともに、プロセス間のギャップとそのギャップを埋めるための在庫や余剰能力を減らす状態を目指しました(図2の状態の実現)。
組み立て産業に比べて重厚長大に見えるプロセス産業においても、最近は徐々に軽薄短小化が求められてきています。そのため、組み立て産業に似た課題が顕在化するようになってきました。
これらにより、従来は事業会議が四半期に1回、製販会議が月次であったところをさらに早める必要が出てきました。両会議を1つにして、これを月次で開催することにより、万が一、計画とのギャップが生じた場合の即応性を高められる状態を目指しました(図2の状態の実現)。
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