生産計画グループのSさんは、月に1度のエンドレス会議で心の芯がいまにも折れそう。利害の衝突、声の大きさ……、理不尽な会議を解消するために必要なこととは?
本連載はS&OP-Japan研究会(主幹:松原恭司郎)のメンバーによる生々しい実体験を基にしたフィクションです。S&OP-Japan研究会は、日本におけるS&OP普及を目的とした非営利のグループです。企業内で日夜数字やお金、予算と計画の間の隔たりを解消すべく、S&OPプロセスの学習と実践を行っています。
限りなく一般に起こり得る状況をイメージしながらS&OP-Japan研究会メンバーが創作した100%フィクションの物語です。特定の個人・企業・団体に関係するものではありません。
また今月も一番ユウウツな会議が近づいてくる……。
月次の「製販調整会議」。私(S:仮名)はこの会議を主催している生産計画グループのマネジャー。
半年前に前任者からこの業務を引き継いだ。最初は何がどうなっているか分からないまま必死にやってきたが、最近全体がつながってきたところでいろいろ深刻な課題が見えてきた。
まず、この会議はなかなか終わらない。朝から晩までとりとめのない会議が続く。丸一日やることはざらで、時間切れで打ち切りになることさえある。
生産計画担当者は営業からの需要情報を個別に集め、種々の生産ラインの制約を考慮して来月の生産計画のドラフトに落とし込む。しかし、ここには既に前月の生産計画からあぶれた需要が優先的に入っており、相当数の需要がはじかれることになるので計画作成の観点からは慢性的な供給不足に陥っていることになる。
営業担当は自分のお客さんと需要に挙げている数量の納期順守がいかに大事かを武器に説得を試みる。
声が大きくて社内に強いネットワークを持っている海千山千の営業担当はこのゲームを勝ち続けるが、この会議の経験が浅く水増しせずに正直な需要を立てている担当者が犠牲になることもしばしば。生産計画側から見ていてもかわいそうなくらいだ。
これは一見「営業担当」対「生産計画担当」の構図に見えるが、実は営業担当間の熾烈なイス取りゲームでもあるのだ。
生産計画担当者は工場やラインの生産能力の中でどのような組み合わせをすればベストな生産ができるかで頭を悩ます。難解なパズルを解くようなもので最終的には製品や工場の制約を知り尽くしているベテランのNさんでないと取りまとめる事が難しいというのが通説になっている。
計画担当はしばしば営業の予測は精度が悪いので効率的な計画にならないとぼやいてはみるが、営業担当以上に顧客の情報を知っている者はいないのでその情報を使わざるを得ない。
売れる製品はほとんどないのに売れない製品が山になっている。それもこれも「製販調整会議」のアウトプットがもたらした結果だ。
経営トップは予算の数字を達成するように発破をかける。売り上げに厳しいフォローが入り、製品在庫は極力少なくしろという。
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