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» 2014年10月16日 10時00分 公開

海外展開でもうかる企業は一部だけ!? 日系企業が国内生産にこだわるべき理由いまさら聞けない「工場立地」入門(4)(2/4 ページ)

[佐藤知一/日揮、田尻正滋/TPMコンサルタント,MONOist]

エンジニアリング業界に見る国内市場縮小を乗り切る術

 「国内市場が縮小傾向にあり、自社に生産余力がでてしまう」――。それでは、こういう時に日本企業はどういう取り組みを行うべきなのだろうか。例えば、1980年代の日本企業ならば現在とは別の道を選んだ。余剰製品を、海外に輸出して稼ぐのである。本当に商品力が強ければ、輸出で勝負できるはずである。これは実際に筆者の勤務先企業も含むエンジニアリング業界がたどってきた道でもある。

 日本のエンジニアリング業界はもともと、国内の石油精製や石油化学企業のプラント工務部門のアウトソース先という位置付けだった。しかし重化学工業の高度成長期は1970年代までに飽和し、1980年代以降、国内プラントの新設は目立って減ってきた。そこで専業エンジニアリング企業は、やむなく海外へのプラント輸出に活路を求めた。それも最初は、プラント資機材は国内メーカーから調達し、建設工事も日本から職人を連れて行くスタイルだった。「国内で生産し、日本の人間を派遣し、海外に販売する」という形でも、円安時代は十分競争力があった。

 しかし、プラザ合意後に円高が進んだ時代に入ると、エンジニアリング企業でも、次第に海外調達比率を増やすようになってきた。ただ、これは現地調達という意味ではない。プラントの輸出先はまだ途上国が多い。欧米先進国や中進国から資機材を買って現地に輸送し、そこで組み立て建設を行うのである。従来は日本から全て輸出する形だったが、適地で生産し海外に販売する形に、変わったのだ。ちなみに現在、日揮の売上高の85%が海外となっている。

 それでも、エンジニアリング企業は、設計やプロジェクトマネジメントのようなコア機能は日本国内に残している。それが競争力と付加価値の源泉だからである。そしてもう1つ、特記しておきたいことがある。それは、エンジニアリング業界は、まだかなりの量を日本国内から調達しているという点である。

 例えば、日本機械輸出組合の「2012年度上期 海外プラント・エンジニアリング成約実績調査報告書」によれば、5年間平均(2007年度下期〜2012年度上期)の専業エンジニアリング企業の海外調達比率は56.0%となっている。日揮の場合、海外調達比率はもう少し高いが、それでも2割以上は日本国内のメーカーから仕入れている。

日本製の生産財は世界的な競争力がある

 エンジニアリング業界はなぜ、資機材の多くの比率を日本国内で調達するのだろうか。世間でいわれているように、日本が「経済の六重苦」にあり、世界で最も高コスト体質の国であるとしたら、ほぼ全てが海外からの仕入れになるはずではないか。

 その答えは、プラントの資機材は「生産財だから」である。購入した側が、さらに自社の生産に使用するものを生産財と呼ぶ。プラント建設の資機材は、文字通りプラント(工場)を構成する部品であり、プラントオーナーはその資機材を何十年にもわたって使うことになる。従って、調達する際の見極めは、非常に厳しい。コスト、性能、品質、納期、サービスなど、考え得る全ての面から総合的に評価して、最適なものを選ぶことになる。

 例えば、筆者は主要機器を売り込もうとした欧米系メーカーに対し、顧客企業が拒絶した場面に立ち会ったことがある。その顧客企業は、開発・設計・製造・保守サービスの一貫性(Integrity)を重視し長期的なパートナーを望んでいた。しかし、欧米系メーカーは注文を受けるが製品は南米の関係会社で生産する企業だった。最終的にその顧客企業は「設計だけして、製造は他国の他企業にやらせるようなところは信用できない。わが社は単なるデザインハウスに発注したりはしない」と宣言し、商談を断ったという。ちなみに、先述した英語の「Integrity」には、「誠実さ」「品位」という意味もあるという。

 このエピソードでも分かる通り、エンジニアリング業界が国内調達を行っているのは、日本製品に総合的な意味での競争力が残っているからである。特に受注生産の生産財はこれが当てはまる。ただし、単純な消費財については、買い手がそれだけ厳しい目で選定する必要がないため、コスト主導に流れやすいのだといえる。

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