さて、最初に見た「つっこみどころ満載」の基板ケースは、前述のポイントを抑えるとどう変わるのか。
まず勾配が全くなかったので、抜き勾配を付ける。肉厚は一般形状もリブも一定だったので、リブの表側がヒケてしまわないようリブを細くし、勾配も付ける。
2カ所の横穴は、一方は何らかのボタンがはまると想定して、ボタンが落ちてしまわないよう丸のまま。そのためアンダーカットが必要になる。もう一方はコードを通すだけと想定して、横穴の下を抜いてアンダーカットを解消する。
はめ込みのボス状部分は肉厚が厚く、ヒケてしまうか、ボイドが入ってしまう可能性があるので、くりぬいて肉厚を均一にする。
落合氏 試作で最初にお見せした形状で作っていると、量産向けの製品設計にすることで、かなりイメージが変わってしまう可能性があります。試作段階から金型を考慮して設計されていれば、試作が3Dプリンタであっても、切削であっても、イメージ的に変わらずに量産に移行することができます。試作の段階で量産がイメージできていると、その後が間違いなく早くなります。今は製造のサイクルタイムが短いので、全てとはいわないまでも、ある程度金型のことが考慮されていると随分違うと思います。
杉山氏 ボス部分の肉厚を均一にするためにくり抜いたことで、表にくぼみができています。このくぼみがデザイン的にNGだとすると、根本的にはめ込みの設計を変えなければなりません。例えば、細い十字のリブとそれを受けるような形状にするとか、そもそも機構自体を変えてしまうとか。「表面は平でないと困る」など、変えてはいけないことは金型の製作側に伝えておくと、後々後悔しなくて済むのではないかと思います。
落合氏 一番理想的なのは、最初の施策の段階で、金型設計が分る人か、金型屋さんを交えて打ち合わせができること。その後の工程はすごくスムーズにいくはずです。
杉本恭子(すぎもと きょうこ)
東京都大田区出身。
短大で幼児教育を学んだ後、人形劇団付属の養成所に入所。「表現する」「伝える」「構成する」ことを学ぶ。その後、コンピュータソフトウェアのプログラマ、テクニカルサポートを経て、外資系企業のマーケティング部に在籍。退職後、フリーランスとして、中小企業のマーケティング支援や業務プロセス改善支援に従事。現在、マーケティングや支援活動の経験を生かして、インタビュー、ライティング、企画などを中心に活動。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.