タイ焼きの型と原理は同じだね! でも機構が全然分からない――そんなあなたのために、金型構造について一からやさしく解説。
前回は「金型設計を始める前に確認しておきたい5項目」のうち、以下4つを説明しました。
今回は、最後の5つ目「成形機の確認」についてです。金型の基本構造とともに説明していきましょう。
図1は、前回登場した、今回成形する卵型ケースです。
図2では、それを金型にはめ込んでみました。
図2の一番左側が金型の外観です。このままでは、肝心の製品が一体どこにあるのか分からないので、金型を開いた状態にしたのが右にある2つの図です。図2は金型構造を大きく2つに分け、黄色と水色で色分けしました。黄色い方を「固定側」、水色の方を「可動側」といいます。そして、型が開いた状態での赤い部分に、樹脂が流し込まれて硬化することで、卵型ケースの「製品部分」ができます。
図2が、「樹脂が流し込まれる前」なら、赤い部分は製品の肉厚分だけすき間が空いている状態(空っぽ)です(以降の図では、空の場合は、白くなります)。
この金型の断面を取ると、図3のようになります。
これが「固定側型板」と「可動側型板」の2枚の主要なプレートで構成される「2プレートタイプ」と呼ばれる金型の基本形です。図3の金型断面図で、各部位についておおまかに説明していきます。
上で挙げた金型の外周部を構成する部品を「モールドベース」といいます。このモールドベースには、さまざまなメーカーから規格化されたサイズの物が市販されています。
市販のモールドベースで納めることで、短納期化や低コスト化が可能になります。ですから、製品形状が市販のモールドベースで収まるなら、そのように設計するのが理想です。
市販のモールドベースに含まれる金型部品としては以上です。当然、それだけの部品で金型が成立するわけではありません。以下は、まだ説明していない重要な部品についての説明です。
上で挙げた部品は、金型にとって最低限必要な基本部品です。これだけで金型が成立することもあります。しかし、成形する製品形状、金型の大きさによっては、他にもさまざまな部品が必要です。
金型の各部品は自社製作の場合もありますが、モールドベースと同じく、国内外の多くのメーカーから販売される部品を使用することもあります。一般的な金型設計では、市販品をよく流用します。
今回の卵型ケースには、通常の型開きでは抜けない「アンダーカット」があります。その部分に対しては、「スライドコア」「傾斜コア」などでアンダーカット処理を設定する必要があります。これについては、後々の回で詳しく説明します。
上で解説した2プレートタイプ以外に、主要な金型構造として「3プレートタイプ」もあります。これは固定側型板と可動側型板の2枚に、「ランナーストリッパープレート」というプレートを加えた、3枚の主要なプレートで構成される金型です。
以降は、成形機に取り付けた後の金型の動きを見てみます。
1.まずは、金型が閉じている状態を見てみましょう(図4)。
まだ樹脂が射出されていない状態です。
2.そこに、成形機から樹脂(赤色)が射出されます(図5)。
このときの樹脂は、高温の液体です。
3.樹脂を冷却固化した後、金型を開きます(図6)。
このとき、成形品(赤色)はまだ可動側(水色)に付いています。
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