トヨタ自動車とデンソー、豊田中央研究所の3社は、従来のSi(シリコン)パワー半導体よりも高効率のSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を共同で開発した。トヨタ自動車は、ハイブリッド車のパワーコントロールユニット(PCU)に採用することで燃費を10%向上したい考えだ。
トヨタ自動車とデンソー、豊田中央研究所の3社は2014年5月20日、従来のSi(シリコン)パワー半導体よりも高効率のSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を共同で開発したと発表した。トヨタ自動車は、ハイブリッド車のモーター制御などに用いられているパワーコントロールユニット(PCU)に採用する予定で、2015年までに公道での走行実験を始める。SiCパワー半導体を用いたPCUにより、従来のSiパワー半導体を用いる場合と比べてハイブリッド車の燃費を10%向上したい考え。PCUのサイズも5分の1と小型化を目指す。
ハイブリッド車のPCUは、走行時には二次電池パックの電力をモーターに供給することで車速を制御するとともに、減速時には減速エネルギーを回生した電力を二次電池パックに充電するなど重要な役割を担っている。その一方で、ハイブリッド車の電力損失の約25%はPCUによるもので、中でもPCUの中核デバイスであるパワー半導体が、25%の電力損失のうち20%分を占めている。
SiCパワー半導体は、Siパワー半導体よりも電力変換時の効率が高いため、この20%分の電力損失を大幅に削減できる可能性がある。デンソーと豊田中央研究所は1980年代からSiCパワー半導体の研究を始めており、2007年からはトヨタ自動車も参加して実用化に向けた技術開発を共同で進めていた。
3社は、このほど共同開発したSiCパワー半導体(ダイオードとトランジスタ)を用いたPCUを試作車に搭載し、テストコースで走行実験を行っている。JC08モードで、5%以上の燃費向上効果が得られたという。
トヨタ自動車は2013年12月に、広瀬工場(愛知県豊田市)内にSiCパワー半導体を開発するための専用クリーンルームを整備するなど研究開発体制を強化しており、SiCパワー半導体の効率をさらに高めて、目標とするハイブリッド車の燃費10%向上につなげたい考えだ。
またSiCパワー半導体は、電力変換時のスイッチングをSiパワー半導体よりも高い周波数で行えることも特徴となっている。これによって、PCUの体積の約40%を占めるコイルやコンデンサを大幅に小型化できる。現行のSiパワー半導体を用いるPCUと比べて、将来的には体積を5分の1まで小型化できる見通し。
なお、SiCパワー半導体に関する技術成果については、「人とくるまのテクノロジー展2014」(2014年5月21〜23日、パシフィコ横浜)で公開する予定だ。
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