富士通研究所は、カメラを用いて入院患者の動きを認識する技術を開発した。センサーだけを用いる従来の方法よりも高い精度で患者の動きを認識できるので、看護師の負担を減らすことが可能になる。東京都の玉川病院において、既に実証実験も行っている。
富士通研究所は2014年5月13日、近赤外線カメラを使って入院患者の起床と離床(ベッドから離れること)などを認識する技術を開発したと発表した。患者の頭部の動きを追うことで、圧力センサーなどを利用する従来の方法に比べて、徘徊(はいかい)や転倒の予兆行動となる起床と離床を高精度に認識するという。
具体的には、ベッド上の患者の状態を姿勢に応じて5つに分類し、頭部の見え方(カメラへの写り方)とひも付けた学習データを作成した。このデータを使用して、起き上がっているのか、ベッドの脇に立っているのかなどを判断する。
枕や布団を誤って頭部と認識しないようにする機能も開発した。まず、画像内で頭部の可能性のある複数の領域を、「頭部候補」として抽出する。「頭部候補」の中で、起床や離床と思われる動きがあったところを「頭部」と確定して様子をみる。もし「頭部」と確定した部分にしばらく動きがなければ、確定を解除して「頭部候補」に戻し、あらためて全ての「頭部候補」の観測を継続する。
医療従事者の意見を参考にして、患者の動きを次のように定義した。
行動の種類 | 内容 | 行動・動きの例 |
---|---|---|
通常の行動・動き | 就寝中の通常の動き | 身じろぎ/寝返り |
注意すべき行動 | 就寝中の通常の動き以外 | 寝つけない/落ち着かない/暴れている/頻繁な起床や離床 |
これら2つの行動の種類を、画像から算出した患者の動きの大きさと回数から判別する。可視化では、「注意すべき行動」と判別された患者の動きを丸印で表し、動きの大きさを5段階の色で表現する。行動が大きければ赤丸、小さければ緑の丸、といった具合だ。これにより、看護師や介護士が「注意すべき行動」を簡単に把握でき、何度も患者を見に行く必要がなくなるなど、負担も減るという。
富士通研究所は、東京都世田谷区にある玉川病院の協力を得て、同技術の実証実験を行った。離床検知性能の実験では、患者2人を4日間、延べ184時間にわたり全離床行動を確認した。その結果、圧力センサーを用いた従来の方法に比べ、高い精度で離床を検知した。行動の可視化については患者3人、述べ176時間にわたって評価し、91%の精度で注意すべき行動が正しく可視化できていることを確認したという。
検証した方式 | 離床検知性能 | 誤検知回数 |
---|---|---|
起床・離床センシング(本技術) | 95% | 3回/日 |
圧力式マットセンサー(従来) | 77% | 11回/日 |
実証実験の結果 出典:富士通研究所 |
富士通研究所は、同技術の2015年度の実用化を目指し、研究開発を進めていく。
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