実際に、モノづくりの現場に目を向けてみると、3次元CADの普及は進んでいるが、まだ3Dデータを活用し切れずに、金型による試作を行うケースが多いという。「せっかく3次元CADを導入したのに、2次元の平面図での確認や紙の図面でのやりとりが行われているケースがある。当然、2次元の図面からだけでは全ての情報を把握し切れないので、前後の工程間で誤解や手戻りが発生してしまうことがある。金型による試作を考えた場合、これだと非常に多くの時間とコストがかかってしまう」(梶山氏)。
こうした課題に対し、同社は試作工程における3Dデータ活用の有効性を説く。MREALによるデジタルモックアップ(試作レス)や3Dプリンタによる金型レスを実現することで、品質向上、コスト削減、納期短縮、コミュニケーション強化、セキュリティ確保などで高い効果を発揮できるという。「MREALは2012年より販売を開始し、現在25社が導入。自由視点かつ実物大で全体像をつかめるため、製造工程のあらゆるシーンで効果を発揮してきた。一方で、全体像を捉えながら、あるパーツの触ったときの感触(触感)や操作性も同時に確認したいというニーズもあり、今回、MREALと3Dプリンタによる仮想と現実の融合を実現した」(梶山氏)。
例えば、触感を確かめたいバイクのハンドル部分の試作品を3Dプリンタで出力し、それを3次元CADデータを基に作成したCG(バイクの全体像のCG)世界のハンドル位置に重なるように設置(位置合わせ)しておく。そうすることで、MREALで仮想的にバイクの全体像を確認しながら、ハンドルの握り心地やスイッチの押し具合などを実際に触れて確認することができる。「3Dプリンタで試作したハンドルだけを握るのと、MREALによりバイクの全体像を目の前で確認しながら握るのとでは大きな違いがある。バイクに乗った目線でないと気が付かない発見があるはずだ」と梶山氏。
同社は3Dソリューション事業を、専任メンバー10人、全国配置するキーパーソン30人の計40人体制でスタートさせる。また、ショールームに3Dプリンタコーナーを新設し、商品の紹介やベンチマーク(造形コストの算出など)が行える環境を用意する。
また、サービス体制については、まず東京でキヤノンシステムアンドサポートのカスタマーエンジニア5人(3D Systems製3Dプリンタの修理・メンテナンス資格を持つ人員)を配置。さらに、この体制を同年6月末までに強化し、北海道から九州までの7地域(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州)をカバーする。そして、年内を目標に導入顧客地域を担当する全国のカスタマーエンジニアにも3Dプリンタの修理・メンテナンス資格を取らせ、サポート体制を各県へと拡大していきたい考えだ。
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