――ハードウェアの面から見て、通信機能のないG-SHOCK(一般的なデジタルウオッチ)と、「STB-1000」ではどのような違いがあるか?
長谷川氏 G-SHOCKのような一般的なデジタルウオッチは大まかにいうと、電力を供給する「ボタン型電池(CR2016)」と、時計用LSIや各種電子部品が実装された「回路基板(PCB)」、そして表示をつかさどる「液晶パネル」の3つで構成されている。STB-1000や第2世代エンジン搭載Bluetooth LE対応G-SHOCKの場合も基本的にこれと同じ構造だが、回路基板に、Bluetooth通信用LSIとアンテナ(“セカンドエンジン”)が実装されている点で異なる。
回路基板に実装されている電子部品の数でいうと、通常のG-SHOCKの4倍くらい多い。ちなみに、時計用LSIは動作スピードが15倍程度速いものを採用している。また、ハードウェアの話ではないが、制御プログラムの規模は通常のものと比べ4倍程度大きくなっている。
その他の違いとしては、ボタン型電池をより大容量の「CR2032」にしてある点だ。Bluetooth LEがいくらローエナジーといえども、当然、消費電力は通常のものよりも大きい。カシオは、電池交換なしで2年間動作することを腕時計の必須要件として掲げており、通信しながらも2年使い続けられるようにした。もちろん、Bluetooth通信用LSIも相当ローパワー化されたものを採用している。
第一世代のBluetooth LE対応G-SHOCKでは、海外メーカーのBluetooth通信用LSIを採用していたが、第2世代からはラピスセミコンダクタと共同開発したBluetooth LE対応LSI「ML7105-00x」を採用している。これにより、さらに安定した通信といっそうのローパワー化を実現できた。
――ANCSによる「通知」、サポートアプリとの密接な連携は非常に魅力的だが、G-SHOCKでも今後「STB-1000」と同様の機能を盛り込む可能性はあるか?
長谷川氏 もちろん、可能性はある。ただ先ほど説明した通り、G-SHOCKには“G-SHOCKのカルチャー”がある。第2世代エンジンを搭載したBluetooth LE対応G-SHOCKを発表した際、ミュージックコントロールを強く打ち出したのもそうした考えからだ。ミュージック、アートなどといったG-SHOCKの世界観にマッチした活用アイデアが生まれれば、STB-1000で展開しようとしている“スポーツ/フィットネス”のアライアンスとは別の方向で、アプリパートナーやデバイスメーカーと連携していく可能性もあるだろう。
――最後に、今後の展望は?
長谷川氏 2014年は「ウェアラブル元年」などといわれ、スマートウオッチ花盛りだが、カシオは時計メーカーとして充電なしで2年間使える安心感と、腕時計の世界観をきちんと生かした形で、スマートフォンと連携することで広がる腕時計の可能性を提示していきたい。
将来のチャレンジという点では、腕時計の液晶パネルをより高精細なものにし、表現力を高めていきたいと考えている。現時点では、高精細な液晶パネルを用いるのは消費電力の面でクリアすべき課題が多い。実現のためには、将来の技術動向とともに、さらなるローパワー化を追求していく必要があるだろう。
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