日産自動車の開発した「スマート・ルームミラー」は、鏡を使った一般的なルームミラーとして使用可能な一方で、鏡面の全てを液晶ディスプレイに切り替えて、車両後方の映像をクリアに表示することもできる「世界初」(同社)のシステムだ。利用イメージの映像も公開されている。
日産自動車は2014年2月28日、さまざまな走行環境でドライバーにクリアな後方視界を提供する「スマート・ルームミラー」を開発したと発表した。鏡を使った一般的なルームミラーとして使用可能な一方で、鏡面の全てを液晶ディスプレイに切り替えて、車両後方の映像をクリアに表示できることを特徴とする。スイス・ジュネーブで開催される「第84回ジュネーブ国際モーターショー」(一般公開日2014年3月6〜16日)で披露した後、2014年春から国内市場向けのディーラーオプションとして販売を始める。2015年からはグローバルでの採用も検討している。
これまで、駐車時に使うバックモニターなどの画面を表示できる液晶ディスプレイを鏡面の一部分に組み込んだり、鏡面部を液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに置き換えたりしたルームミラーはあった。しかし、鏡面部と液晶ディスプレイを任意に切り替えられるルームミラーは「世界初」(同社)だという。
自動車を運転していて、ルームミラーで後方確認を行う際に、後部ピラーに遮られて斜め後ろに車両がいるかいないかが分からないことはないだろうか。また、後席に大きな荷物を積んだときに、車両の真後ろを全く確認できなくなった経験はないだろうか。
スマート・ルームミラーは、こういった車両の後方確認をより“スマート”に行えるようにしたものだ。
その一方で、後席に乗車している子どもの様子を確認する用途などには、ルームミラーの鏡としての機能も必要になる。スマート・ルームミラーは、従来のルームミラーとしても利用可能であり、そういった点も“スマート”である。
スマート・ルームミラーを実現する上で重要な役割を果たした技術要素が2つある。1つは、車両後方を撮影する新開発の130万画素の高性能狭角カメラである。従来の一般的な広角カメラは、広い範囲を映し出すことができるものの、距離感をつかむのが難しく、画質が大きく悪化するという課題もあった。新開発のカメラを使えば、撮影した画像を、高画質かつ正しい距離感を感じとれるような映像を液晶ディスプレイに表示できるという。
新開発のカメラは、降雨時や降雪時、また薄暮や夜間などのさまざまな環境下でも、広い範囲の後方映像を鮮明に映し出することができる。朝夕の逆光や後続車のヘッドライトの光に対しても、高度なカメラ制御と画像処理プログラムを採用することにより、まぶしさが少ないクリアな後方視界の表示が可能だ。
もう1つの技術要素は新開発の特殊形状液晶ディスプレイだ。一般的に、鏡の上に液晶ディスプレイを重ねた状態で鏡として利用しようとすると、2つの鏡像が少しずれて重なって映し出される二重像現象が発生してしまう。この場合、ルームミラーとして良好な視界は得にくくなってしまう。特殊形状液晶ディスプレイは、内部構造を工夫することで、この課題を解決。鏡面部と液晶ディスプレイを任意に切り替えられるようにした。
また、液晶ディスプレイのアスペクト比も、一般的な4:3や16:9ではなく、約4:1になっている。これは、車両後方の映像をルームミラーに映し出せるようにするためだ。
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