千住金属工業は、「オートモーティブ」、「半導体パッケージ」、「ウェアラブル」と3つの用途向けに、それぞれ4つの製品群を展示した。「接合の目的や要求される特性に応じて最適な材料を使ってもらいたい」(説明員)と話す。IBMと共同開発した新工法によるバンプ形成装置「IMS(Injection Molded Solder)-50」や、インライン方式の真空リフロー装置「SVR-625GT」なども来場者の注目を集めていた。
オートモーティブ向けでは、はんだペースト「M794」シリーズ、ニッケル(Ni)ボール入りペースト、無残渣ペースト「NRB70シリーズ」および銀ナノペーストをブースで紹介した。例えば、銀ナノペーストは、250℃で焼結/接合し、960℃と極めて高温まで再溶融しないという特徴を持つ。このため、動作温度が高くなるパワー半導体素子やLEDチップを実装するための接合材料に適している。Niボール入りペーストは、均一な球形のNiボールをペースト内に配合しており、そのスペーサー効果によって基板上でICチップを水平に保ちながら接合することができる。水平実装の実現により、以前から課題となっていた「不均一なはんだ厚」などに起因するクラックを抑制でき、ボイドの低減も可能とした。その結果、高い放熱性を実現できる。
一般的に接合材料としては固体はんだを用いるが、IMS-50は溶融したはんだを使う。基板上に重ねた加工済みマスクの開口部に、IMSヘッドから供給される溶融はんだを加圧しながら注入して、はんだバンプを形成する仕組みである。マスクの設計を変更すれば、高さ方向も含めて任意の形状ではんだバンプを作成できる。はんだ自体の組成も容易に変更可能だ。溶融はんだを用いるのでボイドも生じないという。
SVR-625GTは、加熱ゾーン、真空ゾーン、冷却ゾーンを備えたインライン方式の真空リフロー炉である。パワーモジュール基板に適した「NRB60シリーズ」や表面実装基板に適したNRB70シリーズといった同社製はんだペーストを併用すれば、ボイドの発生率を1%以下に抑えることが可能である。
業界に先駆けて真空リフロー炉の開発に取り組んできたエイテックテクトロンは、250×330mmサイズの実装基板を、最短25秒というタクトタイムで処理できるインライン方式の真空リフロー炉「RNV12M-512RLF」を展示した。RNV12M-512RLFは、加熱ゾーンが5つ、真空ゾーンが1つ、冷却ゾーンが2つの構成となっている。真空度は1〜12kPaである。
同社ははんだメーカーの日本スペリアとの協業などにより、はんだボイドを大幅に低減するとともに、生産効率の高い製品を提供している。エイテックテクトロンの説明員は「日本スペリアのはんだペーストを用いた接合では、ボイド発生率を最大1%以下に低減することができる。その上、タクトタイムは競合他社の半分以下と短い」と話す。
この他、トヨタ自動車、デンソー、富士通テンと複数のはんだメーカーが共同開発した車載用鉛フリーはんだペースト「GSP(Global Solder Paste)」を、荒川化学工業や弘輝が展示した。一般的な鉛フリーはんだの組成は、スズ(Sn)が96.5%に対して、銀(Ag)が3%、銅(Cu)が0.5%で、「Sn3.0Ag0.5Cu」と表記される。GSPはこの組成は変更せずにフラックスを工夫した。標準的に採用されているロジン系樹脂に、新開発の高分子系樹脂を加えている。これによって、従来品に比べて残さ割れ耐性の向上や高い絶縁抵抗を実現した。
荒川化学工業の説明員によれば、「トヨタ自動車は2013年より、鉛フリー化が遅れていたABS(アンチロックブレーキシステム)用モジュール基板の接合にGSPを導入した。トヨタグループ以外の自動車メーカーでもGSPを評価中である」という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.