「ネプコンジャパン2014」では、エレクトロニクス製品の製造に用いられる最新の装置や部品・材料が展示され、各社がデモを交えて最新の機能を紹介した。本稿では、実装基板を接合する技術の基本である「はんだ」に関連した最新製品や技術について報告する。
エレクトロニクス製造・実装検査に関する専門展である「ネプコンジャパン2014」(2014年1月15〜17日、東京ビッグサイト)は、「第43回インターネプコンジャパン」を中心に、「第15回半導体パッケージング技術展」、「第15回プリント配線板EXPO」、「第32回エレクトロテストジャパン」、「第15回電子部品EXPO」、「第5回先端電子材料EXPO」および「第4回精密微細加工技術EXPO」の7つの専門展示会で構成されている。同時に自動車技術を中心とした展示会「オートモーティブワールド2014」や、LEDなど次世代照明技術に関する展示会「ライティングジャパン2014」も行われた。
これらの展示会全体で2014年は、日本を含め20カ国から1770社(うち海外企業は254社)が参加した。会場内は中国や韓国など海外からの来場者が目立つなど、年々国際色が強まっている印象を受けた。本稿では、「接合」技術の基本である「はんだ」に関連した最新の製品や技術について報告する。
回路基板上に実装されたICチップや電子部品を正常に機能させるためには、実装した部品と基板上の配線を接合しなければならない。接合材料としては、一般的に「はんだ」が用いられている。これまで、はんだによる接合は、回路基板上に塗布したはんだペースト上に部品を実装してから、リフロー炉と呼ばれる装置で高温環境下に置いてはんだを溶かし、その後冷却することによって行うのが一般的だ。
こうした中で、実装基板における接合技術も常に進化が求められている。例えば、環境問題に対応するための素材/組成の変更や、それに伴う新しい接合手法の導入などだ。また、用途別のニーズもある。スマートフォンやタブレット端末などでは、搭載する部品/部材にストレスを与えない低温域での接合作業が必要となる。車載用途では、より高い接合信頼性を実現していくための材料や工法の開発が欠かせない。特に電気自動車やハイブリッド車向けでは、高電圧/大電流を制御するパワー半導体素子がこれから本格的に採用されることもあり、放熱性能を高めつつ、クラック発生を抑えられるような接合技術が求められている。主要各社のブースには、こうした市場の要求に対応する接合材料や装置が数多く展示された。
タムラ製作所は、「新規接合材」、「絶縁材」および「はんだ」と、ブース内を大きく3つのゾーンに分けて、主要製品を展示した。その中で、スマートフォンやタブレット端末などの端子接合を低温かつ短時間で行える接合材料「SAMシリーズ(SAM10/32)」や、開発品の低温硬化導電性接着材料「LICA」、0201サイズのチップ部品にも対応できる微細印刷が可能な鉛フリーのはんだペースト「TLF-G」などが来場者の注目を集めていた。
SAM32は、一般的なリジット基板とフレキシブル基板の接合や、フレキシブル基板同士の接合を行う際に、対向電極間の導電性、および隣接する電極間の絶縁性を同時に実現可能な接合材である。しかも、接合は150℃で6秒と低温かつ短時間で行える。低温で接合作業が行えるので、接合部分に近い場所に実装されている部品に対して、与える熱ストレスが小さくて済む。さらに、フレキシブル基板同士を接合する際には、これまで用いていたコネクタが不要になるというメリットもある。
「SAM32は、京セラの防水スマートフォン『DINGO R』に採用された。これによって実装基板の面積を20%削減できるなど、端末の軽量化に貢献している」(説明員)と話す。
開発品として展示したLICAは銀ペーストで、スマートフォンなどに搭載するカメラモジュールの組み立てやMEMSデバイスの接合など、低温での作業が必要な用途に向けて提案している。硬化温度を、これまで一般的であった150℃前後から80℃前後まで下げたことが特徴。しかも、銀ペーストの色を黒に近づけることで、カメラモジュール内での反射を防止できるように工夫した。この新材料を用いれば、耐熱が85℃以下の部品に対してもダメージを与えることなく接合作業を行える。「製品の発売時期は未定だが、評価用サンプル品は提供可能」(説明員)である。
日本スペリアは、「低銀/無銀化はんだ」を業界に先駆けて提供してきた。現在は白物家電市場を中心に、照明器具や電源回路の基板向け接合材料として強みを持つ。「今後はこれらの用途に加えて、当社が十分に入り込めていない社会インフラ機器や車載機器、携帯機器、半導体デバイスといった市場も積極的に狙っていきたい」(説明員)と話す。
鉛フリーはんだペースト「SN100C」シリーズとしてラインアップした「SN100C P820 D5」は、新たな市場の開拓に向けた製品の1つだ。「フラックスにロジン(松やに)を使っていないので、はんだ付け後も残さがほとんど残らない」(説明員)という。しかも接着力は十分に確保されており、搭載した基板の振動やブローによる部品落下も起こらない。窒素雰囲気下での溶融性も確保されており、リフロー後はロジンを含有するタイプのはんだペーストと同等の仕上がりを実現できる。
もう1つの戦略製品は、ダイボンド接合ナノ銀ペースト「アルコナノ(Alconano)」である。銀ペーストは溶融温度が高く、優れた電気伝導性と熱伝導性を有する。このため、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)ベースの次世代パワー半導体素子の接合用途に適しているという。同社は1年前から同製品のサンプル出荷を行ってきた。「2015年以降に量産が始まる次世代パワー半導体素子を用いたパワーモジュールに採用される予定」(説明員)である。
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