そして、最近のはやりであるスマートフォンやタブレット端末との連携だ。チーム「Suelab」の作品「ドミノロボットいーヴぃさん」は、Android搭載端末からドミノを並べるパターンをEV3に指示することができる。現在は、基本的な直線やカーブなどのパターンに加え、ハートマークなどの簡単な図形にも対応する。画像処理を活用すればより複雑なパターンも実現できるだろう。
安価に入手でき、開発に関する情報が豊富なマイコンボードとの連携も多かった。特に「Arduino」や「Raspberry Pi」は、今回のようなプロトタイプ作成には最適なデバイスといえる。“遠隔アーン”を実現したCABA-ROBOは、EV3と遠隔制御を実現するPC間のつなぎとしてArduinoを利用していた。また、アフレル特別賞を受賞した中学生チーム「くろだ02」の作品「Fisans」も、EV3とiPhoneの間のつなぎにRaspberry Piを活用していた。
EV3は、他のマイコンボードに比べれば高価であるが、モーターやセンサーが標準で利用可能で、拡張もできるメリットがある。さらに、レゴのパーツによって筐体やメカ機構の実現も容易である。このように、EV3はプロトタイピング用デバイスとして高いポテンシャルを持っている。ArduinoやRaspberry Piに続くプロトタイピングデバイスとして、活用してみてはいかがだろう。
さて、コンテストの結果を振り返ってみると、親子ペアで出場した社会人チームがワン・ツー・フィニッシュとなり、大学生、中学生と結果を残した。
この結果を踏まえ、増井審査委員長は「テクノロジーは父親、アイデア出しは小学生の娘さんという組み合わせが、ロボットの企画開発においては有効だった」と総括。もし、父親だけで出場していたらどうなったのだろうかと考えると、「この技術をどうだ!! すごいだろ!!」という雰囲気のプレゼンテーションで、「ほぉ〜」と感心させられただろうが、今回のような盛り上がりはなかったかもしれない。小学生の考える素朴でストレートで、そして技術を無視したリクエストが企画をいいものにしたと思われる。
アフレル特別賞を受賞したくろだ02のクロダ君(中学生)は、EV3とRaspberry Pi、iPhoneとPHPを利用した通信機能を備えるロボットを実現し、巧みなプレゼンテーションで会場を魅了。「応募した当初の計画と完成型とでは大きく異なったものになった。しかし、それもロボットの持つ広い可能性故の結果だと思う。ロボットは『無限の可能性』を秘めている」と、中学生らしからぬ(!?)素晴らしいコメントでプレゼンテーションを締めた。
残念ながら今回は活躍できなかった、高専生や大学生も、既存の枠にとらわれず、「あったらいいな」という気持ちを忘れずに開発にチャレンジしてほしい。ロボットやITシステムの開発に必要なスキルは、作りたいものを実現する上での道具にすぎない。“自分が作りたいモノを作る”というモチベーションを持ち、さまざまなテクノロジーを学んでほしい。OSS(Open Source Software)や安価なガジェット、FabLabや開発コミュニティーなど、使えるリソースは年々豊富になっているのだから。
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