八幡化成(岐阜県郡上市)は1965年に創業。岐阜の地で家庭用品の下請や家電販売店用の販促品といったプラスチック成形品の製造を手掛けていました。しかし、家電量販店が台頭する中で、徐々に経営に陰りが見えます。ある時、顧客の問屋が廃業し、さらには同社 現代表取締役の高垣美代子氏の夫だった2代目社長が逝去。
高垣美代子氏は八幡化成の事業を継承した後、その事業継続のために、自社製品の開発を強く企図するようになります。専門店を回り、自社で何ができるのか、何を作ればよいのかを試行錯誤していったのでした。
あるとき、それまでブリキ製で業務用のものが主流だったゴミ箱をプラスチックで成形することを思い付きます。さらに波型の形状をあしらい、木製に見えるような感じで色合いにも注力しました。高垣美代子氏はこの製品を2年間かけて、地道に販促していきます。その結果、徐々に評価されていき、とんとん拍子で売れるようになっていきました。
八幡化成では2008年により高付加価値・高価格の製品を供給することを志向し、新たな高級ブランド「セルテヴィエ(sceltevie)」を立ち上げます。こうした高級ブランド戦略の一環として、八幡化成はフランスで開催される世界最高峰のインテリア&デザイン関連見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展します。そこで製品が大評判になったのでした。高垣美代子氏はデザイン性の高い独自のモノづくりを志向して、製品を創り出してきました。こうした製品のファンになり、その良さを深く理解する「販売代理店≒パートナー」の協力を得たことで、現在の輸出先はNY美術館やシカゴ美術館、オーストラリアのチェーン店、また、韓国やロシアと多岐に渡っています。
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以上、埼玉県と新潟県、岐阜県の3つのモノづくり中小企業の海外市場参入について、その背景にある国際的なパートナーづくりを踏まえながら見てきました。どの企業も海外展示会を1つのきっかけとして、経営者自身が海外の企業と国境を越えた「信頼関係≒絆(きずな)」を構築し、その延長線上に海外市場参入を果たしていることが示唆されています。ここに今後のモノづくり中小企業の経営者が目指すべき道の1つが示されているのではないでしょうか。
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