「健康の源は腸にある」という理念の下、プロバイオティクス製品の製造・販売を進める東亜薬品工業。新たに新培養棟「カルチャープラント」なども建設しさらなる飛躍へ踏み出そうとしていた。生産能力を高める中で業務の効率化は必須事項だ。飛躍への基盤をITの整備で実現する東亜薬品工業の事例を紹介する。
東亜薬品工業の前身である東亜薬化学研究所は、1941年に設立。1948年に現在の東亜薬品工業となり、成長を続けてきた。医薬品業界は長寿企業が多いが、東亜薬品工業も創立から65年以上の歴史を持つ長寿企業だ。
同社が主力として扱うのは医薬品の中でもプロバイオティクスといわれる分野のものだ。人間や動物の腸には、100兆個もの細菌が住みついているといわれるが、腸内細菌のバランスが崩れると、健康が乱れる。プロバイオティクスとは、有益な作用を発揮する微生物により、乱れた腸内環境を正常な状況に戻すこと。東亜薬品工業ではこのプロバイオティクスを生かし、医薬品、動物用医薬品、動物用の飼料添加物や混合飼料、健康食品などを展開している。プロバイオティクス以外の分野では、医薬品マグセント注により産科婦人科領域で活躍している。
一般的にプロバイオティクスでは、まず乳酸菌やビフィズス菌、糖化菌や納豆菌、酪酸菌、酵母菌など有益な菌を培養し、菌を集めて粉末化。この生菌原末を幾つかの菌種で組み合わせたりし、でんぷんなどと混ぜて調製することで製品化する。
創立:1948年1月
資本金:7000万円
社員数:120人
本社:東京都渋谷区笹塚2-1-11
事業内容:医療用医薬品、医薬部外品、健康食品原料、動物用医薬品、動物用混合飼料などの製造、販売
Webサイト:http://www.toabio.co.jp/
同事業では、まず基になる菌の培養が重要な要素となる。東亜薬品工業ではさらなる飛躍を狙い、2013年1月に新たに培養専用の工場設備「カルチャープラント」を建設し、稼働を開始した。新工場では、培養実験室なども備え受託培養などにも取り組む。
自社製品の多品種化が進むことに加え、2005年の薬事法改正により、外部からの受託製造および委託製造が容易になり、製造工程および事業運営の複雑さは急速に増してていった状態だった。業務の質と効率の向上や、精度の高い原価管理が求められる中で、その打開策として取り組んだのが、新たな生産管理/原価管理システムの導入だ。
東亜薬品工業 経営管理本部 経営管理部 部長の山中竹博氏は「取り扱う製品種数はここ10年右肩上がりで増え続けている。現在は150〜160くらいの品種を取り扱っているが、新培養棟の稼働などもあり、今後はさらに増える見込みだ。取り扱い品種が増え業務の複雑性が増す一方で、運営体制が整わないままだった。新たな成長に向けた基盤としてITシステムの整備が必要だった」と話す。
特に同社では、人間用の医薬品から動物用飼料まで、幅広い分野に製品群がまたがっており「ミスが許されない上、ビジネスモデルが全く異なる。例えば医薬品ではグラムやキログラムなどの単位で動くが、動物用飼料などでは数トンというベースで受注が入る。これらの幅に柔軟に対応していく必要があった」と山中氏は課題を語る。
一方、生産現場でも既存システムでは、限界が来ている状況だったという。同社経営管理本部 経営管理部 生産管理課 課長の永島洋行氏は「従来システムでは販売管理システムと原価管理システムが完全に分かれており、在庫情報や生産情報などをそれぞれのシステムに別々に入力する必要があった。品種数の増加などで現場の負担が大きくなる中、二重入力の負担がそれに拍車を掛ける形となっており、作業ミスの危険性もはらんでいた。また業務フローが属人化されており、業務の標準化の必要性にも駆られていた」と話す。
そこで、パッケージシステムの活用による「業務の標準化」、情報の一元化による「計画生産管理の徹底と原価適正化」、IT統制を徹底する「法令順守・品質向上」を目的に新システムを導入することを決めたという。
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