在日米国商工会議所(ACCJ)がイノベーションをテーマにしたパネルディスカッションを実施した。日本網膜研究所社長の鍵本忠尚氏、CYBERDYNE社長の山海嘉之氏、LINE社長の森川亮氏、一橋大学教授の米倉誠一郎氏など第一線で活躍するパネラーが登壇し、イノベーションを生み出す秘訣などについて語った。
在日米国商工会議所(ACCJ)は2013年7月19日、「イノベーションで成長を実現――変革の実践者に学ぶ」をテーマにパネルディスカッションを開催した。
パネルディスカッションには、世界初のiPS細胞由来細胞の臨床応用に取り組む日本網膜研究所の代表取締役社長兼CEOの鍵本忠尚氏や、「ロボットスーツHAL」などで有名なCYBERDYNE代表取締役社長兼CEOで筑波大学大学院 システム情報報工学研究科 教授の山海嘉之氏、ネットワークサービス「LINE」を運営するLINE代表取締役社長の森川亮氏、一橋大学イノベーション研究センター教授でプレトリア大学GIBS日本研究センター所長の米倉誠一郎氏が登壇した。
第2次安倍政権における“成長戦略”の中で科学技術イノベーションが挙げられているように、日本にとってイノベーション(革新および革新的製品)への取り組みは、重要なテーマの1つとなっている。
しかし「日本と海外のイノベーションへの意欲や認識は大きく違う」と米倉氏は指摘する。GEのイノベーション戦略担当者への調査によると「会社経営にイノベーションがポジティブ」と回答した比率が日本では最も低かった他、逆に「ネガティブ」と答える担当者が20%もいた。この比率は他国に比べて圧倒的に多いという。また「社会全体がイノベーションを支持し、若い世代にイノベーションへの熱意がある」と答えた比率は、調査25市場の中で21市場が70%以上だったのに対し、日本は「24%」という圧倒的に低い数値となったという。
一方で、グローバルから見た場合「どの程度イノベーション環境が整備されているか」との回答で日本はドイツ、米国に次いで3位となり、世界から見ればイノベーションへの取り組みを行いやすい国だと見られている。
米倉氏は「このギャップは、日本の担当者がイノベーションを狭くとらえ過ぎているという点や日本への過小評価によるものだ。正しく認識することで、日本発のイノベーションは起こすことができる」と指摘した。
一方「イノベーションに取り組む動機が最も大事だ」と強調するのが、鍵本氏だ。鍵本氏はもともと医者だったが、「失明」によって患者が受ける絶望を何とかしたい、という思いから日本網膜研究所を設立した。日本網膜研究所はiPS細胞を利用した再生医療により、網膜の機能を回復させることを目指す理化学研究所認定のベンチャー企業だ。
鍵本氏は「イノベーションの創出についてプランや方策などは日本でも既に語り尽くされている。しかしイノベーションが起こらないのは『なぜ』の部分が欠けているからだ。心地良過ぎる環境の中では新たな取り組みを行う必要性がないからできない。私の場合は失明した3人の患者との関係が強い動機となった」と話す。
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