計測モジュール「PXI」やグラフィカルシステム開発環境「LabVIEW」を展開するNational Instruments(NI)が、車載ソフトウェアの開発プロセスに対する関わりをさらに深めようとしている。IBMのRational製品群との連携を拡大し、開発効率を高める「テストコンポーネントの再利用」を促進させたい考えだ。
計測モジュール「PXI」やグラフィカルシステム開発環境「LabVIEW」を展開するNational Instruments(NI)が、車載ソフトウェアの開発プロセスに対する関わりをさらに深めるための戦略を拡大させている。かつてはECU(電子制御ユニット)のテスト環境の一部として、PXIやLabVIEWが利用されているだけだったが、車載ソフトウェアの開発に用いられるさまざまなツールとのインタフェースとなるリアルタイムテスト環境開発ツール「VeriStand」の投入によって、車載ソフトウェアのテストプロセスと幅広く関わるようになった。
NIのHIL&リアルタイムテスト担当ディレクターを務めるIan Fountain氏は、「もともと、顧客が自由にテスト環境を構築できるLabVIEWに対する評価は高かったが、他のツールとのインタフェースとなるVeriStandによって、LabVIEWの可能性を広げることができた。LabVIEW、VeriStand、車載ソフトウェアの開発に利用されているさまざまなツール、そして計測モジュールのPXIの連携運用について、顧客や他のツールベンダーとコラボレーションを進める中で、車載ソフトウェアの開発効率を高める『テストコンポーネントの再利用』という方向性が見えてきた。現在は、このコラボレーションをさらに広げていくための取り組みを進めている」と語る。
今後のコラボレーションの中で重要なパートナーとなるのが、要件管理ツール「Doors」や構成・変更管理ツール「Rational Team Concert」などに代表されるIBMのRational製品群である。IBMは2013年3月、これらのツールをクラウド型サービスとして利用できるようにする「Rationalクラウド」を発表した。「グローバル化が進む中で、ツールをクラウド型サービスとして運用したいという顧客の要求に応えたいと考えている。その際にも他社ツールと連携可能なインタフェースは重要だ。そこでIBMと協力して、Rationalクラウドと連携するための開発を進めているところだ」(Fountain氏)という。
自動車向け機能安全規格であるISO 26262に準拠した開発体制を整備する上で、車載ソフトウェアの開発プロセスが関わる範囲は極めて広い。
NIの自動車&航空宇宙担当プロダクトマネージャーを務めるNoah Reding氏は、「ISO 26262対応を進める際に必須と言われているのが、車載ソフトウェアのモデルベース開発だ。実際に、ISO 26262対応とモデルベース開発の導入をセットで考えている企業も多いだろう。しかし、ISO 26262対応の規格文書の中では、モデルベース開発とともにテストコンポーネントの再利用も重要視されている。ISO 26262のキーワードとしてあまり出てこないが、テストコンポーネントの再利用には、ISO 26262対応による開発負荷の増大を抑える効果がある」と強調する。
先述した通り、NIはテストコンポーネントの再利用を自動車業界に提案しており、日本国内でも活用を働きかけている。Reding氏は、「欧米の自動車業界は、開発プロセスの改善が可能な施策を先行採用するのに積極的なこともあってか、テストコンポーネントの再利用が急速に広がりつつある。一方、日本の自動車業界は、新たな開発プロセスに対しても確実性や完璧さを求めるので、テストコンポーネントの再利用についても採用は慎重だ。とはいえ、ISO 26262対応が、テストコンポーネントの再利用を加速させるのは間違いない」と述べる。
NIは、ISO 26262対応をきっかけとしたテストコンポーネントの再利用の導入促進に向けて、VeriStandやテスト自動化ツール「TestStand」を用いて開発した車載システムが、ISO 26262の第三者認証を取得しやすくするために、ドイツの第三者認証機関であるTUV SUDとの協力体制も構築している。
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