IoTへの投資を強化、包括的なソリューション提供を狙うウインドリバー企業動向

ウインドリバーは東京都内で記者説明会を開催し、“モノのインターネット(IoT:Internet of Things)”における取り組みの強化と、関連するソリューション製品の特徴などについて説明し、ビジョンを示した。

» 2013年06月06日 19時42分 公開
[八木沢篤,MONOist]
ウインドリバー

 今やインターネットに接続される機器は、PCやスマートフォン/タブレット端末だけではなく、小さなセンサー機器から家電、各種組み込み機器に至るまで、さまざまなモノが含まれる。いわゆる「モノのインターネット(IoT:Internet of Things)」である。

 これまでは、PCなどを介して人がデータを作り出すことが中心だったが、現在では、センサーからの情報やデバイス自身の情報までもがネットワーク上に溢れ出している。こうした人とモノが作り出す膨大な情報(ビッグデータ)から、新たな価値を創造することがビジネスの世界で求められ始めている。インテルやマイクロソフトが提唱する「インテリジェントシステム」だ(関連記事1)。

IoTへの投資強化、End to Endのソリューション提供を狙うウインドリバー

 この変革において、インテル傘下で、組み込みソフトウェアの最大手であるウインドリバーは、主力の組み込みOS製品群や関連するソリューション製品群に加え、IoTに向けた取り組み・投資を強化。顧客企業のビジネスの効率化、運用コストの削減、満足度の向上、新たな収益源の創出を支援する。

IoTにおけるウインドリバーの戦略的注力分野について IoTにおけるウインドリバーの戦略的注力分野について

 2013年6月6日、東京都内で開催された記者説明会に登壇した、米ウインドリバー マーケティング部門 シニアバイスプレジデントのジム・ダグラス(Jim Douglas)氏は「IoTの到来により、これからは、膨大なデータを価値ある情報に変換する仕組み、爆発的に増え続けるデータをより効率的に扱える設計が必要となる。また、組み込み機器はそれ単体ではなく、エンタープライズシステムの一員として機能するため、脅威の対象になり得る。そのため、安全・安心に利用できるセキュリティの担保が求められる」と説明する。

Jim Douglas氏 米ウインドリバー マーケティング部門 シニアバイスプレジデントのジム・ダグラス(Jim Douglas)氏

 同社は、2012年末から、通信事業者(キャリア)やデータセンター向けに、ネットワーク機器のパフォーマンスとセキュリティ強化を実現し、高い拡張性と柔軟性を保持するソリューション製品「Wind River Intelligent Network Platform(以下、INP)」と、インテリジェントシステムにおけるエッジデバイスの開発を支援する、組み込Linuxとミドルウェアで構成される総合的なソフトウェア開発環境「Wind River Intelligent Device Platform(以下、IDP)」を提供している。

 キャリアやデータセンターの視点で見ると、IoTによるデータ量の増大は、ネットワークのパフォーマンスを低下させたり、最悪の場合、ネットワークのダウンを引き起こす可能性を秘めている。「特にキャリアは、ネットワーク障害に起因するダウンタイムの最小化が求められている。そのため、大規模のネットワークトラフィック・大量のトランザクションを効率良く処理する必要がある。これと同時に、流れるパケットのリアルタイムの監視・解析や、フィルタリングによるセキュリティの確保なども不可欠である」(同氏)。

 INPには、高速、スマート、安全なネットワークアプリケーションを設計するための主要なソフトウェアコンポーネントが一体化されている。「INPは、標準的なLinuxプラットフォームによる構成と比較して、約11倍もパケット処理性能が向上する他、実行アプリケーションの処理性能も約5倍向上する。また、QoSやセキュリティ機能のパフォーマンス向上も見込める」(同氏)という(関連記事2)。

Wind River Intelligent Network Platform 「Wind River Intelligent Network Platform」について

 一方、IoTにおける組み込み機器の開発を支援するIDPは、同社の商用組み込みLinux OS「Wind River Linux」とミドルウェアを基盤とする、M2Mアプリケーション専用の総合ソフトウェア開発環境である。2012年9月に行われたインテル主催開発者会議「Intel Developer Forum 2012」の中で発表されたものだ(関連記事3)。2012年末にVer1.0がリリースされ、「2013年7月中に、堅牢性・管理性・安全性がさらに強化されたVer2.0がリリースされる予定だ」(同氏)という。

 IDPは、組み込み機器市場で実績のあるOSと、M2Mアプリケーション開発向けに設計されたセキュリティ機能、豊富なネットワークオプションに対応したスマート接続機能、検証済みデバイス管理ソフトウェアなどが含まれており、開発期間の短縮に貢献できるとする。IDPの展開で特にフォーカスしている産業分野は「エネルギー、ヘルスケア、オートメーションの3分野である」と同氏。

Wind River Intelligent Device Platform 「Wind River Intelligent Device Platform」について

 ウインドリバーは、IoTにおけるビジネス創出を支援することを目的に、積極的に投資をし、ゲートウェイ/ネットワーク機器からエッジデバイスまで、IoTにおける最適な技術・ソリューションを提供する。「さらに、現在、組み込み型のクラウドやアナリティクスの分野にも投資をしている。こうした取り組みにより、最終的には、IoTにおける最適なソリューションをウインドリバーがEnd to Endで提供できるようになるだろう」(同氏)。

IoTにおける最適な技術・ソリューションを包括的にカバーするウインドリバー IoTにおける最適な技術・ソリューションを包括的にカバーするウインドリバー

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