インテルは、「第16回 組込みシステム開発技術展(ESEC2013)」の開催に先立ち、記者説明会を開催。インテリジェントシステム市場に対する同社の考えと、その方向性をあらためて示し、ESEC2013におけるメイン展示の概要を紹介した。
インテルは2013年4月19日、「インテリジェントシステム」に関する記者説明会を開催。あらためて、インテリジェントシステム市場に対する同社の考えとその方向性を示し、同年5月8〜11日の3日間、東京ビッグサイトで開催される「第16回 組込みシステム開発技術展(ESEC2013)」の出展概要について触れた。
説明会に登壇したのは、同社 クラウド・コンピューティング事業本部 インテリジェント・システムズ・グループ 事業開発マネージャー 安齋尊顕氏。「ビッグデータ活用時代を勝ち抜くためのインテリジェント・システム」と題し、組み込み業界を取り巻く新たなトレンドとして注目を集めるインテリジェントシステム、そして、そこに対する同社の戦略について説明がなされた。
ここ数年、同社は、急増するネットワーク接続機能を備えた組み込み機器を有機的につなげ、そこから集まる無数のデータ(ビッグデータ)から、新たな価値/新たなビジネスモデルを創出する“インテリジェントシステム”という言葉を提唱し続けてきた。
説明会の冒頭、安齋氏は「現在のインテリジェントシステムを取り巻く環境、とりわけ、『クラウド』や『ビッグデータ』という潮流において、データ収集のエッジデバイス(末端に位置する機器)として、高度な処理性能とネットワーク接続機能を備えた組み込み機器の重要性が増している」と強調。人が情報を作り出してきた従来の(ユーザー主体の)ビッグデータに、さらに“モノが作り出す(モノのインターネット/Internet of Thingsによる)”ビッグデータが加わり、今まさに大きな変革が起きようとしていることを示した。
その大きな変革を指し示す具体的な数値として、安齋氏は「2015年までに150億台の高性能なコネクテッドデバイスが世の中に普及し、それらが生み出す情報量は35兆Gバイトにもなる」と説明。そして、そこには「300兆円にも上る大きなビジネスチャンスがある」(安齋氏)とした。
こうした変革をいち早く捉え、その考えを提唱・実践してきた同社。既に幾つかの取り組みや成果も見えてきたという。その一例として、安齋氏は「リテールテックJAPAN2013」でも披露していた、米国のスポーツファッション専門店Foot Lockerの事例を紹介した(関連記事1)。
同店舗では、店内のビデオカメラ映像から来店者数や来店者のショッピング行動を評価するシステム「LightHaus Visual Customer Intelligence(VCI)」を活用。分析・可視化されたデータを基に、店舗のレイアウト改善やスタッフの配置位置の見直しなどを行い、顧客コンバージョン率(来店顧客が商品を購入する割合)を向上させる取り組みを行っている。「専門店では一般的に、来店した80%の顧客が何も買わずに帰っていく。POSだけだと購買時の情報しか把握できないが、このシステムでは、カメラ映像を分析するため来店した全ての顧客の行動を把握・分析できる」(安齋氏)。
もう1つの事例として、米国におけるスマートグリッドでの活用例が紹介された。米国では、送電網が脆弱な地域もあり、停電がよく発生するケースがあるという。「こうした不安定なインフラに対して、今後、太陽光発電や風力発電といった自然エネルギー(次世代のエネルギー)からの電力が加わっていくことになる。より安定した稼働のために、インテリジェントシステムの枠組みを導入することで、電力の使用状況などをリアルタイムに監視して、停電を起こさないようコントロールする取り組みが実際に行われている」(安齋氏)。
具体的には、各家庭や町内などに設置されたエッジデバイス「PMU(Power Management Unit)」により、リアルタイムに送電量/消費電力量を監視。それらデータをデータセンター側に送り、サーバで収集されたデータを処理・分析。そのデータをインフラの監視・制御を行うソフトウェアで活用するというものだ。「ここには、当社が提唱する『インテリジェント・システム・フレームワーク』が用いられている。このフレームワークには、インテリジェントシステムの実現に必要な構成要素である『接続性』『管理性』『安全性』を実現するためのソフトウェア、ツール、ソリューション・サービスといった、さまざまなコンポーネントが含まれており、この枠組みを活用することで、インテリジェントシステムの実現に掛かる開発期間を大幅に短縮できる」(安齋氏)という。
こうした前提を踏まえ、同社はESEC2013で「Connect,Manage,Secure(接続性、管理性、安全性)」をブース・テーマに掲げる(関連記事2)。
「過去の展示会では、インテリジェントシステムが現実世界でどのように活用できるかという“可能性”を中心に示してきた。今回は、そこをさらにかみ砕いて、インテリジェントシステムをいかにして構築していくのかを提示する。そのために、インテリジェント・システム・フレームワークが提供するコンポーネントレベルから分かりやすく紹介していきたい」(安齋氏)。こうした狙いを基に、ESEC2013の会場では、大きく4つの展示デモを披露するという。
1つが、同社のプロセッサを搭載した三菱電機製「MELSEC-Qシリーズ C言語コントローラ」を活用し、産業機器の監視・障害予知(予防保全)を実現する「インテリジェントFAコントローラ」だ。さらに、同社が得意とするカメラ&大型タッチパネルディスプレイを搭載した「次世代自動販売機(コネクテッド自販機)」の展示、マルチサービスのプラットフォームとして注目されているスマートテレビの「ホームメディアゲートウェイ(HEMSとしても機能するもの)」のソリューションを披露する予定だという。「これら3つの展示デモは、前述したインテリジェントシステムを取り巻く環境の中で、エッジデバイスに当たるものだが、今回のESEC2013では、そこからさらに踏み込んで、データセンター側のソリューションも併せて紹介する」と安齋氏。
それが、2月に発表した「Intel Distribution for Apache Hadoop」である。これは、大規模データの分散処理・管理のための基盤として知られる「Apache Hadoop」をベースに、同社独自の機能強化がなされたものである。「組み込みの専門展示会でHadoopというと何だか飛躍したようにも聞こえるが、インテリジェントシステムを実現する上で、データセンター側のソリューションは欠かせない。そこを今回のESECではあえて取り上げることで、皆さんの興味・関心を引き付けたい」と、安齋氏はその意図を説明する。
これに関連して、ESEC専門セミナーでは、同社 クラウド・コンピューティング事業本部 データセンター事業開発部 シニア・スペシャリスト 田口栄治氏が「インテリジェント・システム 標準化フレームワークの必然性と、End-to-End アーキテクチャーの概要」というテーマで講演を行う。講演では、まず、インテリジェントシステムの組み込み市場における可能性と問題点を整理し、標準フレームワークの必然性を解説。それを踏まえた上で、クラウドやビッグデータとの関連性を理解するためのEnd-to-Endアーキテクチャの概要と要素技術について触れ、最後に、今後のビジネスの可能性について言及する予定だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.