これまでのJEDECのモバイルメモリ規格の名称がLPDDR、LPDDR2とあったように、このLPDDR3規格はこれまでの規格を基にスピードアップを図ったものです。
JEDECによる一般のDDRメモリ規格にDDR2とDDR3があります。LPDDR2規格はDDR2規格を基に、モバイル用規格としましたが、LPDDR3規格はDDR3規格を基にしたものではなく、DDR2規格を基にした、LPDDR2規格の高速版です。
ここで、表1にDDR、DDR2、DDR3の規格とLPDDR、LPDDR2、LPDDR3規格の概略をまとめます。表には在りませんが、容量もLPDDR3はLPDDR2の2倍まで対応しています。
LPDDR3規格は単なるLPDDR2規格の速度を上げただけの規格になっているのは、急きょ、間に合わせで作られた規格だからです。
本来、JEDECでは、次のモバイルメモリには新しい技術を使って、高速化と低電力化を飛躍的に推し進めようとしていました。
しかし、これまでの製品の延長である、携帯電話やディジカメ、携帯音楽機器ではなく、スマートフォンやタブレット端末のような新しい携帯機器が急速に普及してきました。これまでの機器の発達であれば、新しいモバイルメモリ規格の制定までは、LPDDR2規格で間に合うと思われていたものが、新しく出現した機器に対しては、LPDDR2規格では、機能不足で、新しいモバイルメモリ規格の制定を待っていたのでは、間に合わなくなってしまったのです。
このため、急きょ、すぐに製品化できる技術を使って、メモリの高速化を主な目標に、消費電力は増えなければ良いという、LPDDR3規格を早急に決める必要に迫られたのです。
LPDDR3規格は来年(編注:2012年)中には規格も決まり、規格に対応したメモリも出現すると期待されています。
メモリバスを含めて、バスのデータ転送速度は、1ライン当たりの転送速度とバスのデータ幅の積になります(図2)。
このため、PCIバスなどでは、バスのクロック速度を上げると同時にバスのビット数を増やしてデータ転送速度を上げてきました(表2)。
しかし、クロック速度の上昇に従って、多くのビットデータの同期が困難になって来ました。特に長い基板配線では、クロストークノイズやISIノイズ、基板のガラス繊維のむら(図3)や製造誤差(図4)による伝播遅延誤差など、多くの要因により、全く同じ配線長であってもデータライン間で発生する遅延誤差が制御しきれなくなりました(図5)。
このため、発想の転換が行われ、バスのビット幅を1ビットにして、クロック速度を上げて、データ転送速度を上げるシリアルデータ転送が登場しました。そして、このシリアルデータ転送ラインを複数、設けてデータ転送速度を上げるというものです。お互いのシリアルデータ転送ライン間ではデータの同期は必要ありません。
並列のPCIバスから直列のPCI Expressバスになり、データ転送速度が急激に高速化されました(表3)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.