三菱重工業は、人が近づけないような災害・事故現場を自由に移動し、2本のロボットアームで点検/保守・補修などが行える遠隔作業ロボット「MHI−MEISTeR(マイスター)」を開発した。
三菱重工業は2012年12月6日、人が近づけないような災害・事故現場を自由に移動し、2本のロボットアームで点検/保守・補修などが行える遠隔作業ロボット「MHI−MEISTeR(マイスター)」を開発したと発表した。
カメラなどを用いた点検・監視を実現する従来型の災害対応ロボットとは異なり、MHI−MEISTeRは、2本のアームの先端に取り付けた専用作業ツールにより、さまざまな機能を遠隔操作で実現できる。
MHI−MEISTeRは、1999年に茨城県東海村で発生した核燃料加工施設の臨界事故を機に、当時の日本原子力研究所(現:日本原子力研究開発機構)と同社が共同開発した、耐環境型ロボット(通称:Rabot)がベースとなっている。MHI−MEISTeRは、このRabotの姉妹機として製作していた社内用ロボット(MARS−D)に、原子力施設のメンテナンス現場で培った技術を組み込み、東京電力・福島第一原子力発電所で使えるように改良したもの。ロボット内部の汚染防止対策など、耐放射線性能や遠隔操縦性を高めている。ちなみに、ベースとなったMARS−Dは「2011国際ロボット展」の同社ブースで見ることができた(関連記事)。
最大の特徴である2本のロボットアームは、7つの関節(7自由度)を持ち、先端部分にさまざまな専用作業ツールを取り付けることができる。例えば、片方でモノを把持しながらもう片方でそれを切断するといった作業や、左右それぞれに異なるツールを装着して1台のロボットで2種類の作業を同時に行わせるといったことも可能だ。
実際、コンクリートの汚染調査用に開発した専用作業ツール「ドリル」および「ハンド(挟み爪)」を装着し、遠隔操作による試験を行ったところ、コンクリートの壁や床から70mm程度の深さまでのサンプルを採取できたという。この結果から、「人が近づけない高線量域における汚染状況調査での活躍が期待できる」(同社)としている。
同社は、今後、東京電力・福島第一原子力発電所などでの多様なニーズに対応するため、各種先端ツールの開発をはじめ、さらに高機能な遠隔作業ロボットの技術開発を進めていくという。
寸法(外形) | 長さ:1250mm、幅700mm、高さ1300mm |
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質量 | 440kg |
移動方式 | 対地自動追従式独立4クローラー式 |
移動速度 | 2km/時 |
走行性能 | 傾斜40度、段差220mmまでの階段昇降、不整地走行、狭い場所の走行 |
通信 | 無線・有線の選択(無線時はバッテリーで2時間稼働) |
ロボットアーム | 7軸アームを2本搭載。1本当たりの可搬質量15kg |
表1 MHI−MEISTeRの主な仕様 |
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