電池を利用する場合、機器に必要な電圧を得るために直列に接続することが多い。リチウムイオン二次電池の平均放電電圧は3.6〜3.8Vであるため、例えば機器内で10Vが必要な場合は、3個程度直列に接続する必要がある。
NECが開発した正極材料を利用すると、電圧が4.5V以上になるため、2個で済む。同じエネルギー密度であれば、電圧が高い電池の方が有利だ。電池数が減るため、電池管理システムの規模も小さくて済む。Ni2+とNi4+というニッケルの価数変化を利用して、電圧を高めた。
従来、電圧を高めようとすると、リチウムイオンの移動に用いる溶媒(電解液)の分子構造が壊れてしまうという問題があった。正極表面で溶媒が酸化、分解し、ガスが発生してしまう。寿命も短くなってしまっていた。
このためNECは高電圧に耐えるフッ素化溶媒を併せて開発した。従来のカーボネート系溶媒と比較すると、特に高温時の特性が改善されたという。45℃下で500サイクルの充放電試験を実行したところ、従来の電池セルではガスが発生し、膨れ率は2倍以上に達していたが、フッ素化溶媒を利用した新セルでは膨れ率を10%に抑えることができたという(図3)。
フッ素化溶媒を利用した電池の容量は、500回後でも初期容量の80%を維持でき、45℃下でも60%を保った。
同社によれば、今回の新正極材料と新溶媒を用いたリチウムイオン二次電池の製品化時期は、2年後がめどだという。「電気自動車に新電池を利用するには数千〜数万サイクル後であっても高い容量を維持しなければならない。新電池は500サイクルまでの容量維持を達成した段階であるため、2年後はまず電気自転車などの用途から市場に入っていきたい」(NEC)。
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