リチウムイオン二次電池に求められているのは、大容量と軽量化だ。NECは電池の正極材料と電解液を工夫することで、大容量で軽い電池の開発に成功した。実現のカギはニッケルとフッ化物だ。
スマートフォンやタブレット、電気自動車などに欠かせないリチウムイオン二次電池。性能の改善に欠かせないのは、容量を大きく、寿命(充放電回数)を長くする開発努力だ。
NECは2012年10月9日、リチウムイオン二次電池の大容量化に成功したと発表した。同社はマンガン(Mn)を利用した正極材料の開発、製品化を進めている。例えば、日産自動車と共同開発したラミネート型リチウムイオン二次電池は、既に電気自動車「リーフ」に採用されている。
マンガンは埋蔵量が多く、安価であり、安全性にも優れる。しかし、他の正極材料と比較すると放電容量が小さい*1)
*1) マンガン酸リチウム(LiMn2O4)の放電容量は120mAh/g、これは例えばリン酸鉄リチウム(LiFePO4)の放電容量の75%に相当する。
NECが電池を大容量化した手法は、正極に含まれるマンガンの一部をニッケル(Ni)で置換したというもの。黒鉛負極と組み合わせた場合、電池のエネルギー密度は従来の150Wh/kgから200Wh/kg以上へと約30%増加するという。
エネルギー密度が向上するとどのようなメリットがあるのだろうか。例えば電気自動車(EV)に新電池を採用すると、単純計算では走行距離が30%延びる(図1)。
つまり、マンガンをニッケルで置換した電池を同じ従来と同じコストで製造できれば、エネルギー(Wh)当たりの製造コストは大幅に削減できる。しかし、マンガンと比較してニッケルは材料コストが高い。ただし、これを勘案しても、エネルギー当たりのコストは、大量生産時に最大25%減る計算だとした。
新開発の正極の結晶構造は従来のマンガン酸リチウムと同じスピネル型を採る。このため充電時にも結晶構造が壊れにくく、安定性に優れる。新正極の組成は、マンガン3に対しニッケル(Ni)1を含むLi(Ni0.5Mn1.5)O4である(図2)。ニッケルを添加したことで、放電容量が増加し平均放電電圧が高まった。
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