NECが大容量の家庭用蓄電システム市場に一石を投じた。kWh当たりの単価が30円を下回る製品を住宅メーカー向けに発売、停電対応や太陽光発電システムとの連携も可能だ。IT企業らしく、クラウドを使った異常検知システムも組み込んだ。
電力に対する不安が高まる中、蓄電システムの製品化が続々進んでいる(関連記事:「節電や停電に備える大容量蓄電池、課題は何か」)。
家庭用蓄電システムでは、大手メーカーとしてNECが先行した。2011年7月に限定100台ながら、容量6kWhの家庭用蓄電システム「ESS-H-002006A」を素早く投入(図1)。分電盤と接続することで太陽光発電システムなどと連携動作できることをうたった。
2012年3月29日、同社は「本命」の製品「家庭用蓄電システム ESS-H-002006B」を発表、2012年7月に出荷を開始する(図2)。停電時には自動的に蓄電システムからの給電に切り替わるなど、災害対策にも役立つ。
新製品の改良点は、大きく3つある。低価格化と薄型化、クラウド対応だ。「今回の家庭用蓄電システムは、直接ユーザーに販売するのではなく、住宅メーカーなどを通して販売する。価格は100万円台である」(NEC)。例えば、三井ホームはNECの家庭用蓄電システムを注文住宅の設備として発売する。2012年4月2日に発売を開始、2012年7月以降に出荷を始める。蓄電システムの価格は157万5000円*1)だ。
*1) 6年間の保守サービス費用を含む。設置費用は含まない。
NECによれば、同製品の価格は競合他社と比較しても(kW当たりの単価が)最も安価な製品の1つだという。価格設定を低めに抑え、年間1万台の出荷を見込む。
旧製品は少数であっても素早く出荷することを目標にしていたため、筐体の小型化設計が十分ではなかった。今回は、内部部品の配置と構成を改善したほか、自然空冷ができるように工夫したことで、冷却ファンも廃した。戸建て住宅の屋外の壁際に設置するため、薄型化が重要だということだ。旧製品と比較して奥行きを約30%少なくできた*2)。同社によれば310mmという奥行きはエアコン室外機並だという。
*2) 従来製品の寸法は、幅760mm×奥行き450mm×高さ880mm。新製品は幅980mm×奥行き310mm×高さ1100mmであるため、体積自体は10%程度増加している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.