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» 2012年09月14日 11時50分 公開

日本のデジカメが世界で勝ち続けられる理由本田雅一のエンベデッドコラム(番外編)(2/2 ページ)

[本田雅一,MONOist]
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 筆者はかつて、コンパクトデジタルカメラ市場はあっという間に韓国、中国に奪われるのではないかと考えていた。部品点数が絞り込まれ、コンポーネント化が進んだコンパクトデジタルカメラは、レンズモジュールを始め、お買い物でも組み上げることができるからである。

 しかし、安く高画質で高機能な超小型レンズを作れるところはそうそう存在しない。根本的な部分はアナログで差が付くためだろうか。今に至っても(生産地という意味では国外に出ているが)製品ブランドとして、日本メーカーは圧勝だ。

 市場が小さくなったとはいえ、超高級な製品も存在するオーディオ機器も、最後の最後、耳に届ける部分ではアナログだ。アナログ品質への消費者のコダワリが、ハイエンドと普及品の間を二分する要因になっている。モノとしての価値を高め、決定的に追い付けない状況を作るのは、どんな場合にもアナログだと眞榮田氏は言う。

 これをパソコン市場に当てはめると、違いがよく分かる。

 アプリケーション分野の拡大が鈍化し、ハードウェア性能が勝る状況が続いている今のパソコンでは、プロセッサの細かなスペックを気にする人は明らかに少なくなっている。扱うデータ量が増加を続けているため、より高速なプロセッサを求める声は止まないが、ほんの少しのクロック周波数の違いを比べながら、少しでも高速な製品をといった選びをする時代ではなくなった。むしろ、SSDなどのストレージ容量や速度の方が、購入時に気にする消費者の方が多いだろう。

 その結果、パソコンも感性で選ぶ時代になってきていると思う。

 重要なのはプロセッサが何GHzの何コアなのかではなく、快適に使えて将来も継続して高い満足度を維持できることだ。また、高解像度なディスプレイであるという数字が重要なのではなく、より快適に使える美しく安定した見え味の表示であることがより高い重要性を持つ。

 大容量バッテリーを搭載していることや極端な軽量性といったスペックではなく、実際に何時間バッテリーで使えるのか。利用方法と性能のバランスが求められる。まとめるならば、ユーザーが体験することの全てが重要なのであって、スペックや新技術の採用は顧客満足を上げるための手段であることを忘れてはならないということだ。

 では満足度とは何なのか? 製品のコア技術にアナログが残っているなら、眞榮田氏の論が他の全ての製品に当てはまることになる。しかし、アナログでの差異化ができない分野の製品もある。感性に訴える方法はさまざまだ。

 なぜ高画質なカメラが欲しいと思うのか。なぜ高画質なホームプロジェクターが欲しいと思うのか。心地良い洋服、美味しい料理、リラックスできる空間。これらに大きな価値があるように、これからの電子機器の“価値作り”の方向を考えるべきときなのかもしれない。

 Mac OS XやWindowsの進化の方向を見ても、機能志向から、実利用時にどんな改善をユーザーに提供できるか? といった視点に切り替わってきている。基本ソフトとしての機能は十分となり、ユーザーの利用シナリオと利用環境に合わせ、より快適に心地良く使えるよう、調整していくという方向で、これからのパソコンは進歩していくだろう。

 眞榮田氏の出したアナログによる差異化をデジタル商品で考えるというサジェスチョン。このアイデアをヒントとして足元を見直してみると、いろいろな分野で同様の事例が見つかることに気が付くだろう。


ITmedia Virtual EXPO 2012 エンベデッドゾーン

日本のデジカメが世界で勝ち続けられる理由

世界最強ブランド“メイドインジャパン”が現在苦戦を強いられている中で、デジタルカメラはグローバルで戦える製品として存在し続けています。「ITmedia Virtual EXPO 2012」では、キヤノン常務・眞榮田雅也氏とライター・本田雅一氏の対談を実施し、日本のモノづくりの方向性を探ってみました。

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筆者紹介

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本田雅一(ほんだ まさかず)

1967年三重県生まれ。フリーランスジャーナリスト。パソコン、インターネットサービス、オーディオ&ビジュアル、各種家電製品から企業システムやビジネス動向まで、多方面にカバーする。テクノロジーを起点にした多様な切り口で、商品・サービスやビジネスのあり方に切り込んだコラムやレポート記事などを、アイティメディア、東洋経済新報社、日経新聞、日経BP、インプレス、アスキーメディアワークスなどの各種メディアに執筆。

Twitterアカウントは@rokuzouhonda

        近著:「iCloudとクラウドメディアの夜明け」(ソフトバンク新書)


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