手詰まり“もがく”グーグルの行く先は?本田雅一のエンベデッドコラム(4)(1/2 ページ)

モノづくり現場を数多く取材してきたジャーナリスト・本田雅一氏による“モノづくりコラム”の新連載。テクノロジーを起点に多様な分野の業界、製品に切り込んできた本田氏による珠玉のエピソードを紹介しつつ、独自の鋭い視点で“次世代のモノづくり”のヒントを探る。(編集部)

» 2011年02月25日 12時00分 公開
[本田雅一,@IT MONOist]

グーグルの手詰まり感

 家電のデジタル化が進み、さらにネットへの接続機能が当たり前になってきている昨今、インターネットビジネスの潮流は、製品開発を行ううえで重要な関心事といえる。遠くハードウェア開発の位置から見ていると、インターネット関連ビジネスはここ数年、安定した流れにあるように見えるかもしれない。しかし、実のところ大きな転換期に入り始めているというのが、もっぱらの見方だ。

 その象徴ともいえるのが、グーグルの手詰まり感だ。好調な本業の業績を受けて、グーグルは続けざまに新しい提案を行ってきた。さらにプライベートの開発者イベントであるGoogle I/Oには参加登録者が殺到し、登録開始後、わずか50分で受付が締め切られたという。かつてWindowsへと開発者が殺到したころのことを思い出す読者もいるかもしれない。

 しかし、その好調さからは想像もつかないかもしれないが、グーグルは明らかに転換期にある。先日、グーグルは現在の成功を導いたといってもいいエリック・シュミット氏がCEOを退任し、創業者でもあるラリー・ペイジ氏に引き継がれた。

世界最大の広告代理店

 ご存じのようにグーグルは検索連動広告で圧倒的なナンバーワンであり、いわゆる“検索屋”だった事業者の中で、唯一の勝ち組といってもいい位置にいる。いまやグーグルは検索屋などではなく、インターネット世界における広告代理店のような存在だ。あまりに圧倒的過ぎて、ライバルはまったく歯が立たない。

 しかし、あまりに強過ぎるが故に、ほかの事業がうまくいかないという、かつてのマイクロソフトと同じような袋小路に入っているようにも見える。以前であれば、グーグルが何を提案してもあつれきが生じることはあまり見られなかったが、昨今はグーグルの行く先々に争いごとが増えてきた。

 オンライン広告を寡占してしまったため、その分野での成長に限界が見え始めているからだ。さらに成長を続けるには、オンライン広告市場を拡大するか、あるいは他分野を開拓するしかない。ところがグーグルは長年、広告以外の収入源を探し求めているものの、なかなかそれを見つけることができていない。シュミット元CEOが推進してきたクラウド事業も、注目は常に集めてきたものの、なかなか収益を挙げられずにここまできた。

 そこでグーグルは、オンライン広告市場そのものを拡大する戦略を取ってきた。それがAndroidやChrome OSの開発、それにそれらOSと自社が提供するオンラインサービスとの密な結合だ。グーグルはモバイル市場とテレビ市場に自社のプラットフォームを作り、ユーザー属性や機器を利用している場所などと連動した広告をアウトプットする「ターゲティング広告」における世界最大の広告代理店になろうとしているわけだ。

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