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» 2012年06月22日 09時45分 公開

宇宙から燃えずに地球に帰ってこれるんです。そう、「i-Ball」ならね日本が誇る宇宙技術の名脇役(1)(3/3 ページ)

[大塚実,@IT MONOist]
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まずはデータの蓄積を

 i-Ballは直径40cmの小さなボールであるが、そこには大きな可能性が詰まっている。

 スペースシャトルやソユーズなど、有人機の経験が豊富な米国・ロシアでは日常的に再突入が行われているが、有人機を持たない日本には、これまで再突入機の実績があまりない。1994年の軌道再突入実験機「OREX」、1995年の回収型衛星「EXPRESS」、2003年の次世代型無人宇宙実験システム「USERS」、2010年の小惑星探査機「はやぶさ」など、数えるほどしかないのが現状だ。

 i-Ballによって、再突入の貴重なデータを得ることができる。日本は現在、HTVの後継機として、地上への帰還能力を持たせた「回収機能付加型HTV」(HTV-R)の検討を進めているところだ。HTV-Rを飛ばす前に、HTVの打ち上げ機会を利用して再突入のデータを蓄積するというのは、非常に良いアイデアではないだろうか。いまのところ、具体的な計画はないが、その先には有人機の開発も見えてくる。

「i-Ball」の技術は有人機にもつながる可能性がある 画像9 「i-Ball」の技術は有人機にもつながる可能性がある

 i-Ballがどんなデータを送ってきてくれるのか、「運命の80秒」に何が写っているのか、今から楽しみだ。

最後に:この連載の目的

 さて、読者の皆さんは、宇宙開発のどんなことに興味があるだろうか。宇宙飛行士? それともロケット、人工衛星、探査機だろうか。

 これらは宇宙開発の分野において、いわばメジャーコンテンツだ。新聞やテレビなどで報じられる機会が多く、ネット上のコンテンツも豊富にある。ちょっと自分で調べれば、次から次へとさまざまな情報が出てくるだろう。

 だが、例えばロケットや衛星に搭載されるコンポーネント(装置)レベルの話になってくると、詳しい情報は案外少ない。

 例外と言えるのは、小惑星探査機「はやぶさ」だ。関連書籍が何十冊と出たり、研究者・技術者による講演があったり、メーカーのインタビュー記事がWebに掲載されていたり。イオンエンジン、サンプラー、ターゲットマーカなどについて、技術と同時にさまざまなエピソードまで広く知られるようになった。

 とはいえ、これはあくまでも例外中の例外だ。せっかく高度でユニークな技術を使っていても、実際には、あまり知られないまま、埋もれてしまう場合が多い。筆者も取材の中で、もっと話を聞きたいと興味を持つことは多いのだが、「ニュース」という枠内では、どうしても記事全体のバランスに配慮する必要がある。一部だけ詳細に取り上げることは難しく、泣く泣く削ったことも数知れない。

 だが、それを埋もれたままにしておくのは、あまりにももったいない! この不定期連載では、そういったものにスポットライトを当てていきたい。コンポーネントやシステム、場合によっては電子部品の1つでもいい。宇宙の「技術」をキーワードに、個人的に面白いと思ったものを紹介していく予定だ。(次回に続く)

筆者紹介

大塚 実(おおつか みのる)

PC・ロボット・宇宙開発などを得意分野とするテクニカルライター。電力会社系システムエンジニアの後、編集者を経てフリーに。最近の主な仕事は「小惑星探査機「はやぶさ」の超技術」(講談社ブルーバックス)、「宇宙を開く 産業を拓く 日本の宇宙産業Vol.1」「宇宙をつかう くらしが変わる 日本の宇宙産業Vol.2」(日経BPマーケティング)など。宇宙作家クラブに所属。

Twitterアカウントは@ots_min



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