TEDはインテル製品を応用したFPGAソリューションにも力を入れている。会場では、Spartan-6とインテル Atomプロセッサ「Z530」を組み合わせた画像処理向けリファレンスプラットフォームを披露していた。同製品では、負荷が高い画像処理の前工程をSpartan-6が担い、その他の工程をZ530上で動作するWindows/Linuxアプリケーションで行うなど、適宜チップを使い分けできるのが特長だ。
同製品に併せて、Atomプロセッサ/コントローラハブ「E640/EG20T」を搭載し、業界最小フォーム規格(65mm×58mm)に準拠した小型CPUモジュール「CoreE600」も訴求していた。「リファレンスプラットフォームで評価した後で量産ボードを開発する際、『あまり手を掛けたくないCPU部分はキャリアボードへ簡単に装着できるモジュールなどで対応できないか』という現場ニーズからCoreE600は生まれた」(TEDの説明員)。
TEDが2011年末に販売契約を結んだ米デジレントの製品も早速展示されていた。Spartan-6(LX45)搭載で199米ドルなど安価なアカデミック価格を打ち出すデジレント製評価ボードは、ザイリンクスの教育機関向け割引サービス「ユニバーシティプログラム」で標準ボードとなっており、世界70カ国、1200校で採用されているという。「国内のザイリンクスパートナーでは珍しくアカデミック専門部隊を擁している当社(TED)がデジレント製品を扱うことで相乗効果を発揮していく」(TEDの説明員)。
なお、TEDとデジレントは相互に代理店契約を結んでおり、TEDがデジレント製品を国内で販売する代わりに、デジレントがTED製品を北米などで販売するという。つまり、TEDは海外展開も視野に入れているわけだ。
TEDのパートナー各社もFPGAソリューションを競い合っていた。その中でひときわ目立っていたのは次の2つだ。
エアフォルクは、映像全盛の中で珍しく、FPGAを利用したオーディオ伝送システムを披露していた。同システムは、音声のイーサネット伝送に必要なインタフェース、フィルタ、ミキサー、ソフトプロセッサなどのモジュールを送信側・受信側それぞれオールインワンでSpartan-6に実装したものだ。コアとなるのは、マルチメディア伝送の標準プロトコル「RTP」を独自にハードウェア化した「HRTP」。内蔵のリクロッキング機能により、伝送中に劣化した信号を補正して実遅延を数msレベルに抑える。また、伝送路を二重化しており、遅延の小さい方を常に採用する仕組みだ。
「放送局と送信所を結ぶ専用回線をIP回線に置き換える用途で注目され、実際にFM局に採用されている。100Mビットイーサなら(二重化した状態で)40ch伝送が可能。ギガビットイーサなら映像も低遅延で伝送できる見通しが立っている」(エアフォルクの説明員)という。
一方、映像伝送にこだわるネットビジョンは、デジタル画像処理検査システムの新製品「SVI-06」を紹介していた。Spartan-6(XC6SLX25)を採用し、USB 3.0インタフェースに対応したため、従来バージョンに比べて転送速度が格段に上がっているという。「ホストPCの性能次第だが、1080p映像を30fps、約125MB/sで転送できる」(ネットビジョンの説明員)。
さらに、FPGAのパフォーマンス余力(約50%)を活用し、動的再配置を実現している。画像処理に伴う前処理、中間処理、後処理の3つの専用ブロックが提供され、これらにユーザー固有ロジックを自由に配置できる。「メモリへの画像取り込みやホストPCへの画像転送などの基本機能はSVI-06に任せ、ユーザーは固有機能の開発に専念できるのがメリット」(ネットビジョンの説明員)。
TEDのPLDビジネスは、現行主役のXilinx 6シリーズでソリューションを“深化”させる一方、Xilinx 7シリーズ、Zynq、USB 3.0など新しい萌芽が確実に出てきている。今後、ソリューションの幅が大きく広がりそうだ。
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