東京エレクトロン デバイスは2012年2月10日、東京・品川で恒例のカンファレンス「TED プログラマブル ソリューション」を開催。展示会場では、パートナー各社とともに“Xilinx 7シリーズ”などに基づく最新のFPGAソリューションの数々を披露した。
今回のカンファレンスで目玉だったのは、ザイリンクスの28nm FPGA製品「Xilinx 7シリーズ FPGA」だ。2010年6月に発表されてから1年半が過ぎ、機は熟してきた感がある。その中でも東京エレクトロン デバイス(以下、TED)が推していたのは、ミッドレンジ向け製品「Kintex-7 ファミリ」だ。
特に目立っていたのが、TEDとザイリンクスが共同開発した最新のKintex-7評価プラットフォーム「ACDC(Acquisition, Contribution, Distribution and Consumption)1.0 ベースボード」により、フルHD映像を4倍の解像度を持つ“4K2K”映像へアップスケールさせるデモだ。
ACDC 1.0 ベースボードは、Kintex-7(325Tデバイス)、DDR3 SDRAM(2Gビット)×4、ギガビットトランシーバ(12.5Gb/s×8ch×2HPC)などを搭載し、4つのFMC(FPGA Mezzanine Card)コネクタでインタフェース拡張できる。3Dテレビ、4K2Kテレビなどの次世代ディスプレイ開発への適用が期待されている。
デモシステムでは、ザイリンクスのビデオ処理IP「Real-Time Video Engine(RTVE)」をKintex-7に実装し、4K2Kアップスケールを可能にしていた。「RTVEの仕様により、4つのSDRAMを利用して並列でフレームごとスケーリング処理している」(TEDの説明員)とのことだった。
7シリーズの特長である低消費電力性もザイリンクス製「Kintex-7評価ボード」を使って訴求。PC上のGUI操作により、7シリーズが備える省電力機能を“オン”にすると、ベースが9W前後の総消費電力(メモリはアイドル状態)が半分程度に減る様子をグラフィカルに示していた。
デモで使われていた省電力機能は次の通りだ。スタティック電力では標準1.0Vのコア電圧を0.9Vで稼働させるオプション「-2LE」、ダイナミック電力ではクロック供給を精緻に制御する「インテリジェント・クロックゲーティング」。そして、I/O電力ではメモリのDCI終端、入力バッファを無効にする(7シリーズでは、メモリが書き込み中およびアイドル状態のとき、動的にDCI終端、入力バッファの消費電力をゼロにできる)。
TEDの説明員によれば、「7シリーズをそのまま使っても消費電力は従来比で30%程度しか減らないが、(Xilinx FPGAの最新設計ツール)ISE Design Suiteにより、省電力機能を設計にうまく盛り込むと、(7シリーズがうたう)50%削減を達成できる」という。
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7シリーズと同等の28nmプログラマブルロジックとARMプロセッサ「Cortex-A9 MPCore」を融合したFPGAプラットフォーム「Zynq」のコーナーは、常時人だかりができていた。2011年末からアーリーアクセス・ユーザー向けにZynqの第1弾「Zynq-7000 EPP」の出荷が始まっていたが、実デバイスの披露は本邦初だった(2011年末の「ET2011」でザイリンクスが展示していたのは“エミュレーションボード”である)。
披露されたデモシステムは、USBカメラの映像をZynq上でリアルタイム処理して表示するもので、エンコードを担うのはCortex-A9 MPCore上のLinuxソフトウェアである。「来場者からは、ARMコア搭載によりUSBをすぐ使えるのは大きな魅力、既存資産を生かした産業機器の開発に使えそうだとの声が出ている」(TEDの説明員)とのことだった。
「Zynq-7000 EPPのGeneral ES(通常エンジニアリングサンプル)の登場に併せて対応ボードを出荷したい。ボード自体の仕様は極力シンプルにし、オプションのFMC製品で拡張性を持たせる」(TEDの説明員)と、今後のZynq展開が期待される。
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