2番目のタスクはEVだ。グランドリヨン共同体の発想は、他の大都市の参考になるだろう。新街区を建設すると企業や住民の移転が起こり、一般には地域内の交通渋滞が悪化する。さらに駐車スペースが不足し、排気ガスによる環境悪化が起こる。これは当然だろう。そこで、EV、さらにEVによるカーシェアリングを導入する。
エネルギー自給のために住宅やビルに設置した太陽光発電システムとEVを組み合わせて、太陽光の余剰電力対策とEVの大量充電による電圧低下を一挙に解決しようというアイデアだ。
なお、フランス国内ではパリで既にEVのカーシェアリングが実現されている。リヨンでは太陽光との組み合わせを模索する点がより優れている(関連記事:パリがEV先進都市に変身、3000台のシェアリングに取り組む)。
三菱自動車工業とフランスPSA Peugeot Citroënが30台のEVを提供、普通充電器30台と急速充電器3台を置く。EVカーシェアリングサービスは、フランスVeolia Transdevが担当する。μEMSを使った発電予測、充電制御を中核に、太陽電池モジュールの発電情報とカーシェアリングスケジュールの最適化を組み合わせるという。
HEMSを使った家庭内の電力モニタリングは、スマートグリッドに不可欠な技術だ。グランドリヨン共同体の実証事業では、既設住宅も取り込み、100〜200世帯を対象とする。住宅全体をひとくくりに測定するのではなく、多回路レコーダーを使って、分電盤のフィーダ単位で計測する(図3)。その際、水道メーターやガスメーターの情報も組み合わせる点が、先進的だ。
実証サイトでは、フランスの住宅公社であるGrand Lyon Habitatが協力する。
以上紹介した3つのタスクを結び付けるハブとなるが、CMS(Community Management System)だ(図4)。ビル内に設置したBEMSやHEMSからの情報とEVを担当するμEMS、一般住宅に置いたHEMSの情報を統合し、グランドリヨン共同体全体と情報を共有する。今後フランス国内でポジティブエナジービルディングを広める際に必要な指標となる。
NEDOの委託事業は、リヨン市だけではない。国内でも4地域を対象に既に始まっている(関連記事:スマートグリッドの実証実験、横浜市など4地域で開始へ)。
海外でも米国ニューメキシコやハワイでのNEDOの実証事業が始まっており、今後、スペインマラガ市や中国共青城での実証事業を開始する予定だ。
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