Si(シリコン)太陽電池の変換効率が、理論限界の30%を目指してじりじりと向上している。ベルギーIMECと太陽電池7社は共同で変換効率23.3%という太陽電池セルを開発した。変換効率を高めるだけではなく、低コスト化を目指した技術も盛り込んだ。
ベルギーの国際研究機関であるIMEC*1)は、2011年12月1日、変換効率が23.3%と高い結晶Si(シリコン)太陽電池セルを7社と共同開発したことを発表した(図1)。同時に製造コスト低減も実現したという。共同開発企業は、ドイツSCHOTT、フランスTotal、フランスGDF SUEZ、ベルギーPhotovoltech、オランダSolland Solar、カネカ*2)、米Dow Corning。
*1) IMECはナノエレクトロニクスを中核とした研究に注力している。太陽電池などのエネルギー技術の他、次世代半導体(有機エレクトロニクス技術やリソグラフィ技術)などの開発で著名。ナノエレクトロニクス以外ではヘルスケア技術、情報通信技術の開発にも取り組む。
*2) IMECとカネカは、今回の発表とは別に太陽電池の低コスト化技術を2011年11月28日に発表している。ヘテロ接合太陽電池の集電極の形成に不可欠だったAg(銀)の代わりにCu(銅)を用いる技術である。6インチ角のヘテロ接合太陽電池で変換効率21%以上を実現したという。なお、ヘテロ接合太陽電池とは、アモルファスSiと結晶Siのように異なる材料を組み合わせた太陽電池をいう。
複数の手法を導入することで効率を高めた。
まず、表面電極を使用せず、その代わりに導入した裏面電極(IBC)の形状をくし形にした。表面の開口率を高めて入射する光を増やす効果がある。この他、セル薄型化やモジュール組み立て工程を簡略にすることを狙っており、いずれも材料・製造コストの低減につながる。
次にSi基板の加工である。FZ(floating zone)法で作成したn型のSi基板の表面をピラミッド型のランダムな凹凸に加工したことで、入射光の反射を抑えた。SiN(窒化ケイ素)の反射防止膜を形成も入射光の反射を抑える取り組みである。
太陽電池セルの測定値は以下の通り。短絡電流密度(JSC)は41.6mA/cm2、開放電圧(VOC)は696mV、曲線因子(FF)は80.4%である。
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