CdTe(カドミウムテルル)薄膜太陽電池は全ての太陽電池の中で、最も製造コストが低い太陽電池だ。量産規模も大きい。このため、変換効率向上が特に大きな意味を持つ。
米国の薄膜太陽電池モジュールメーカーであるFirst Solarは、CdTe(カドミウムテルル)薄膜太陽電池の最大変換効率を、2001年に達成した16.7%から、17.3%*1)に高めたと発表した(図1)。
*1)米国のNREL(National Renewable Energy Laboratory、米国立再生可能エネルギー研究所)が変換効率を測定した。
太陽電池の変換効率競争のなかでも、CdTe太陽電池の効率改善は大きな意味を持つ。なぜならCdTe太陽電池は安く、量産規模も大きいからだ。同社は太陽電池の出力1W当たりの製造コストを、他のメーカーに先駆けてはじめて1米ドル以下に引き下げた。
さらに同社は世界太陽電池市場におけるシェアを確実に伸ばしてきており、2008年には3位、2010年にはシェアトップ(8.4%)、生産規模1400MWに達している。
17.3%という変換効率は、現在生産量が最も多い多結晶Si(シリコン)太陽電池の変換効率と同水準であり、多結晶Siと競争しながら市場を広げていく力がある。同社によれば、今回17.3%を達成した太陽電池セルは、商業規模の設備と材料を利用して製造したものだという。なお、大型CdTe太陽電池モジュールの変換効率は最大13.5%に達している(NRELが測定)。
量産中のCdTe太陽電池の変換効率も着実に伸びている。First Solarは、製造したCdTe太陽電池の平均変換効率を発表している。その数字によれば、2010年第1四半期が11.1%、2011年第1四半期が11.7%である。同社のロードマップによれば、2014年のモジュール効率の目標は、量産品で13.5〜14.5%である。
太陽電池の材料コストを低減するには、量産工場での製造プロセスの改善が重要だ。同社は既にガラスシートを生産ラインに投入後、2.5時間以内に完成品を搬出できる連続製造プロセスを確立したという。First Solarによれば、量産速度が高いことは、製造時に費やしたエネルギーを太陽電池の発電で回収するために必要な時間(エネルギーペイバックタイム)の削減や、CO2(二酸化炭素)排出量の低減にも役立っているという。
CdTe太陽電池は、人体に有害なカドミウムを含むために、Si太陽電池に比べて市場を選ぶ。例えば日本国内市場では受け入れられていない。同社は通常の利用に加えて、火災発生時などにもCdが漏出しないことを検証済みであり、回収プログラムにも力を入れている。
同社によれば、製品価格に太陽電池モジュールの回収費用が含まれているため、無償で太陽電池モジュールを回収できるという。回収した太陽電池モジュールの総重量の90%を再利用していることもうたう。
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