再生可能エネルギーは出力が小さく、火力や原子力とは比較にならないという意見を持つ人は多い。だが、IPCCの評価によると、省エネと政策の後押しが組み合わされば、2050年時点の全エネルギー供給の8割弱を支えることができるという。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2011年5月9日、アラブ首長国連邦のアブダビで開かれた会合において、再生可能エネルギーの潜在的な可能性を示した。会合で発表された報告書「Special Report on Renewable Energy Sources and Climate Change Mitigation(SRREN)」によれば、政策による下支えがあった場合、2050年時点で、全世界のエネルギー需要の77%を満たすことが可能だという。
再生可能エネルギーは出力が小さく、化石燃料や原子力と比較して補完的な位置付けにあるという理解は正しくない。
報告書の作成にあたっては、各国の120人の研究者が参加し、160以上の普及シナリオを検討した。再生可能エネルギーの普及度に大きな違いがある4種類のシナリオについて特につっこんだ分析を加えている。
普及が見込まれる再生可能エネルギーは6種類ある。栽培植物に由来するバイオ燃料の他、太陽光と太陽熱、地熱、水力、海洋から入手できるエネルギー、風力である。海洋では波力や海洋温度差、海流、干満を利用した潮力などがエネルギー源として検討されている。
4つのシナリオのうち、最も再生可能エネルギーの普及が進んだ場合は、全世界のエネルギー供給407EJ(エクサジュール)のうち、77%に相当する314EJを占める。314EJとは、2005年時点の米国の年間総供給エネルギーの3倍以上に及ぶ膨大な量だ。
このシナリオに沿った場合、今後40年間で最大5600億トンのCO2(二酸化炭素)の排出を削減できる。2050年時点ではCO2の総排出量の1/3を削減できることになる。報告書ではCO2削減には再生可能エネルギーが大きく貢献するとまとめている。
4種類のシナリオには、省エネルギーが進まない最悪ケースも含まれている。この場合は全世界のエネルギー需要は最善ケースの1.8倍に相当する749EJまで膨れ上がり、再生可能エネルギーはこのうち15%を担うにすぎない(図1)。
各国の政策が再生可能エネルギーを支持しなくても再生可能エネルギーの比率は高まり続けるが、政策の支持があれば加速する、いわば下方硬直性があるというのが報告書の結論だ。
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