★目利き力ポイント!:異なった種類の金属を組み合わせて使用する場合は、慎重に選択すること(電食を考慮)。
べらんめぇ、またこれよぉ! 日本の教科書や指導書の定番のせりふ「慎重に選択」? どういう意味だってんだ、あん?
甚さん、僕も学生時代や、いまの会社の「設計標準ガイド」を見てそう思いました。
オレサマはよぉ、いつでも「慎重」よぉ!
甚さん! 図3を見てください。これがうちの会社の「設計標準書」です。いいかげんな表現でしょ?
ここでまとめましょう。
ここからは、オレサマに任せろ! では、どうするのかが問題よぉ。まずは、衝撃的な図4をみろ!
あっ! 甚さん、その図は、「情報処理機器 UL1950」や「IEC60950(*1)」に記載される「電気化学的電位表(電気化学的ポテンシャル表)」と言うんですよね?
*1 定格電圧が600V以下における情報処理機器の安全性に関する国際規格。
おぉ、そうらしいなぁ。オレサマはよぉ、そんな規格は知んねぇけど、いまから実務バージョンにへいるぜぃ!
それでは、実務知識の解説に入ります。
図4におけるグレーの帯より上の範囲は、前述のIEC60950においては、「電食の組み合わせ」、つまり、好ましくない金属同士の組み合わせです。しかし、この範囲の金属を見ると、Mg(マグネシウム)やPt(プラチナ)など、EV車を含む電子機器などの一般機械設計では、めったに選択する機会がない金属です。
良君、これが教科書よ。極めて重要な知識だがよぉ、実務ではイマイチ、役に立たねぇってもんよ。
実は、現場の技術者がほしい実務情報とは、もっと具体的な「どの組み合わせで腐食事故があり、どの組み合わせならいいのか?」というものなんですよね。
では、具体的に解説します。
図4のグレーの範囲で、電食トラブルが発生しています。つまり、数値でいえば、「0.35V以上」の範囲です。従って、結露の多い環境や塩分などの電解質溶液に浸るところは回避した方が無難です。
また、グレーの帯より下の範囲は、発生電圧が小さいので気にしなくも大丈夫でしょう。ただし、前述したように塩水などの電解質溶液に浸るところや、火災や人命にかかわる部位に適用する場合は、十分な確認実験が必要です。
当事務所のクライアントさまにおいては、電食は設計審査(デザインレビュー)における定型質問になっています。
★目利き力ポイント!:異なった種類の金属を組み合わせて使用する場合は、「電気化学的電位」が0.35V未満であること。
★目利き力ポイント!:電食は、設計審査(デザインレビュー)の定型質問にすること。
では、また次回をお楽しみに。(次回に続く)
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会 幹事、埼玉県技術士会 幹事。日本設計工学会 会員。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。Webでは「システム工学設計法講座」を公開。著書に「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)がある。
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