金型設計者に樹脂流動解析は有効だけど、それ以外の部品・商品設計者に有効なのは熱伝導や電波障害の解析だ。
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
筆者は度々、クライアント企業さまが開催する設計審査にゲスト審査員として招かれます。第三者の立場で審査する重要な役目と自負しています。
そこで気が付いたのは、機械系技術者は、「応力」や「変形」に関しては強みがありますが、以下の分野が苦手だということです。
「1」は、既に前回、ボルタの電池で解説しましたので、今回以降は、「2」「3」「4」、それに関する「目利き力」を強化しましょう。
それを説明するに当たって、まず甚さんと一緒に「設計者の道具(ツール)としてのCAE」について考えていきたいと思います。
実は、甚さんはこの間、ある加工サービスを提供する企業が主催するセミナーで招待講演をしてきたみたいです。講演タイトルは、『樹脂設計が機械設計を制す』。甚さんは、「下町職人の代表」とのことで、上機嫌です。
甚さんのほかには、有名な3次元CADベンダーの講師が、「3次元CADの有効活用」について講演していたようです。
甚さん! 実は、僕もそのセミナーに参加してきました。猛暑だったのにすごい人数の参加者がいましたねぇ。
このセミナーは、大阪と名古屋で開催されたんだが、聴講者はそれぞれ100人以上と聞いたぞ。これはすごいことなんじゃねぇかい、あん? オレサマの人気故かな?
そうかもしれませんね〜、甚さん! (なわけねぇだろ〜)
で、実は、そのセミナーで気になる話があってよぉ……。
そのセミナーの1コマである3次元CADベンダーの講演では、以下について語られていました。
「1」の樹脂流動解析ソフトは、設計者には不要だ!
近年、3次元CADと連携する解析ソフトウェアの販売が盛んです。しかし、筆者は樹脂流動解析ソフトウェアについては、甚さんのいう通りだと考えています。
ただし厳密に言えば、商品設計者、部品設計者に樹脂流動解析は不要。しかし、金型設計者に樹脂流動は有効であり、必須です。ここはしっかり押さえてください。
前者の設計者に不要な理由は、「餅(もち)は餅屋に従うべき」だからと考えるからです。「流動解析ソフト」を使用する時間があるならば、直に「餅屋」へ出向き、対面で打ち合わせ(コミュニケーション)をしていただきたいと筆者は思います。
技術者における「技術の最高峰」は何だと思いますか?
それは「最高技術の習得と発揮」だと学生たちは答えますが、違います。「コミュニケーション力」です。以降の回のどこかで、その詳細をお話ししましょう。
射出成形の金型設計者が身近にいないなら、部品設計者が樹脂流動解析を実行する価値もあると思うんですけど、甚さんのその考え方には賛成ですよ。
そうだろ! あん? 米農家がよぉ、餅屋に出向いてよぉ、餅作りを忠告したらよぉ、もう、二度とその農家との取引きはねぇよなぁ?
だけど、甚さん! 解析は解析でも、熱伝動解析、応力解析、騒音解析、EMI/EMS解析(電波障害解析)などは、設計者が実行すべき解析でしょ?
そいつは、オイラもその通りだと思うぜぃ。
これらの解析の「餅屋」は、商品設計の設計者、部品設計の設計者、生産ラインの設計者ですね。
さっきのCADベンダーの講演内容をもう一度見ちくり。
- 樹脂流動解析ソフトの販売が好調です
- お勧めの熱伝導解析ソフトは、こちらです
講演の内容は、この2つのテーマに分かれていたんだが、これは理にかなった構成だと思ったんだぜぃ。
「1」は、金型設計者からの需要の話、「2」は、金型設計以外の設計者が「より優れた餅屋になる」ために「道具を使いこなせ!」という助言というわけですか?
そうだそうだ。いんやぁーまいったぜぃ、良君! 最近、おかしいんじゃねぇかい? あん? あの日いれぇ冴えまくっているじゃねぇかい? ところでよぉ、エリカちゃんとうまくいってるかぁ? あん?
え〜〜と、それは、その……。最近、仕事以外ではすっかり無視されているというか……。
そういうわけで今回は、「熱伝導率」「比電気抵抗およびIACS(アイアックス)」の解説になります。
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